ナスジオでの剣闘士新見解

 『ナショナル・ジオグラフィック日本版』2021年 8月号の宣伝がメールで送られて来た。いつも突っ込みの甘さで騙されるので無視するのだが、特集のひとつが「グラディエーター」だったので今回は騙されたと思って、Kindle版を購入してみた。

 ま、そこでの売りは、ここ20年の新たな証拠を加味しつつ、実験考古学的に、実際に剣闘士の武具のレプリカを着装しての体験からの見解で、これはまあ我々がこれまで目にしてきた学者先生の机上の空論にはない、現実感があったので、1000円超の値段もよしとしよう、という気にさせられた。

 たとえば、レポーターが試しに被った青銅製の兜は6kgだったとか、別の箇所ではローマ兵との比較で、完全武装の兵士は25kgのところ、剣闘士は7-20kg(剣闘士の種目によって重量は異なってくる)だとか、ローマ兵の兜は厚さ1mmで2kg、それが魚兜闘士のものは厚さ2mmで重さ4kgで、視野も限られ音も聞こえにくかった、といった実体験が報告されていて、私にとってきわめて参考になる内容だった。

 その重装備を一つの根拠として(そのくせ、彼らが手にした獲物は多くの場合せいぜい30cmのナイフ:だけどこれでは絵にならないので復元想像図ではどうしても長めにグラディウスなんかとして描かれてしまう)、剣闘士競技では負傷はつきものだったにしても致命傷はまれで、おそらく10人に一人くらいだったのではないか、とか、もし死亡した場合、主催者は剣闘士のオーナーに補償せねばならなかった、とか、要するに現代のレスリングなどの格闘技と同じレベルの興行だった(ま、露骨にいうと八百長の、ショー・ビジネスだった)という方向で捉えるべきだ、というわけで、まずまず納得の結論といえよう。とはいえ、現代格闘技で10人に一人死んだらおおごとであるが。

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