月: 2022年8月

サラブレッドならぬ農耕馬政治家の妻:河井案里

 『おもちゃ:河井案里との対話』(文藝春秋、2022年)はノンフィクション作家でジャーナリストの常井健一の作である。昨日話題にした「アゴラ」の書評を覗くとそれが目にとまったので即古書で注文したら、翌日速攻で届いた。400ページ近くと予想外に大部だったが、私の興味は夫の克行がどう書かれているのか、にあったので第2章前半をまず読む。

 はしなくも、p.87で常井は広島学院のことをこう書いている。「戦後、カトリックのイエズス会信者たちが創立した学校である」。こんなこと学院のPHを読めばちゃんと書いてあるはずなのだが、イエズス会はカトリックの男子修道会で、日本史の教科書にも出ているフランシスコ・ザビエルはこの修道会創設者の一人で、カトリックのことを多少知っていれば「イエズス会信者たち」などとは書きはしない。まあ信者には違いないが、修道士が構成する修道会なのである。プロテスタント的な印象感覚でああ書いたのだろうか。これで彼の書いていることの信用度が私の場合10%は減じてしまう。しかし、我が出身研究室の大先輩坂田正二先生のお名前が出てきて(p.106)、生前の先生を多少知っている私からすると、これはさすがさもありなんと。

アマゾン・コムで見たら地元広島の中国新聞取材のものもあったので、これも古書でさっそく発注した:ちなみに実家近所で活動している若い市会議員さんもお金もらってまして、反省文がポストに配布されてました

 克行の母がどうやらすでにカトリック信者で、彼自身も幼児洗礼を受けていたようだ(地域的に祇園教会所属か:豪放磊落なワンマン主任司祭ロレンツ・ラウレス神父(93年に77歳で死去)のことが思い出される)。きょうびの社会的関心からいえば、新宗教の2世がらみの問題がここにも顔を覗かせているし、叙述によるとどうやら両親共に地域社会では持てあまし気味のクレーマー的存在だったようで、これって信者(に限らないが)にときたま見ることできる人間類型なのである。上智在職中にも、信者の母親の強い希望で修道院入りとかを強要されて、だけど不適合で苦難の人生を歩んでいる学生・院生をときどき目撃していたので(だいたい五島出身とかの長崎信者)、貧困が原因の宗教がらみの親子のしがらみって問題多いなと考えざるをえないのである。

 私が40年前に岡山県の山の中の津山市に10年間居住していたとき、なにぶん田舎だったので、新興住宅地だったのに古くからの講組組織が持ち込まれて生きていて、年2回の草刈り・ドブ掃除には世帯から一人出さねばならない、葬式の場合は男女各一人を帳場と台所に出さねばならない、といった調子だった。戦前のしきたりが途絶えてしまった被爆都市広島から流れてきた私など、そんなことそれまでやったことなく「へ 〜そうなんだ」とビックリしながらも参加していたのだが、そこにモルモン教の独身女性が引っ越してきて、あるときの葬式で「私は宗旨が禁じているので葬式には出ません」といったものだから、町内会で大問題になったことや(「だったらあそこの葬式の時は協力しないぞ」の発言あり、私が「いや、信者仲間が独自にやるでしょうから町内会は出る幕ありません」といって宥めて、一件落着)、丘を開発しての新興住宅地なので町内に神社とか秋祭りもなかったのだが、子供たちが他の町内のように神輿を担ぎたいと言い出したので、気のいい世話人有志が即席でそれらしきものを作って、子どもたちはそれをかついで町内を練り歩いたのだが、これは誰が言い出したのか不明だが、ああいう宗教行事を行政の末端のニュートラルであるべき町内会がやるべきでない、と言った人がいたらしく、これには威勢のいい世話人が腹を立てて怒っていたこともあった。あれから40年、もう住民の世代は入れ替わったから変わってしまっただろうか。

 逆に、上京して正月に登学してみると、千代田区紀尾井町の麹町カトリック教会の門前に門松が飾ってあるのを見て、これはこれで私は「門松って八百万の神々が降下してくる依り代じゃないか、こともあろうにカトリック教会がこんなことしていいのだろうか」とビックリしてしまったのだが(他にも、地元のなんたら祭で、結界を張る綱と紙製の御幣みたいなのが町内を囲むのもある)、とかく外来宗教と伝統ある地域社会の関わりは微妙であるが、既成伝統教団は鷹揚に受け入れるが、新興教団は激しく抵抗するという図式が未だ顕在なのだろうか。

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カトリックと旧統一教会と、反社会的組織

 「アゴラ:言論プラットフォーム」というメルマガがある。私はそこで旧統一教会系の「ウィーン発『コンフィデンシャル』」(管理人:長谷川 良)なるブログを知り、カトリック関係の情報をかなり掲載しているのでときどきチェックしていた。執筆者が「世界日報」記者であり、ある意味「アゴラ」もそれ系であると自覚的に認識してのことだった。

2022/8/29「聖職者の性犯罪は教会組織の問題!」(http://blog.livedoor.jp/wien2006/archives/52338427.html)

 これを読んで右欄をみたら、以下が載っていた。

2022/8/23「旧統一教会は何を目指しているのか」(http://blog.livedoor.jp/wien2006/archives/52338175.html)

2022/8/27「南野森教授(憲法学)の抗議に答える」(http://blog.livedoor.jp/wien2006/archives/52338342.html)。

 後者の元記事が「アゴラ」だったようなので、それに引きずられ、久々に「アゴラ」に行ってみてちょっと驚いた。その冒頭に編集部名で、以下の文言が掲載されていたからである。「筆者の長谷川良氏は世界日報のウィーン特派員です。アゴラでは世界日報が統一教会(世界基督教統一神霊協会)の設立したメディアであることを承知の上で、彼のブログを転載していましたが、安倍元首相の暗殺事件の後、統一教会がこれに関与している疑いもあったため、転載を一時中止していました。そのような事実がないため、転載を再開します」。

 そして、今度は編集部名で以下の記事が。「統一教会は「反社」だから解散させろと憲法学者が主張」(https://agora-web.jp/archives/220821020331.html)。そこで引用されていた中曽根関係に飛んでみたら、ここでも泥縄式に思わぬ人的つながりが出てきて・・・(すなわち、例の元文科省事務次官の前川喜平氏が妻を経由してなんと中曽根家とつながっている、とされていて)。 今般の旧統一教会問題で、はしなくもあれこれの関係が、無知な私にとって顕在化してきたという次第。知らないことが多すぎますねえ。

 これらの記事に対してコメント書いている人たちの大部分はしょうもないが、中には面白い指摘をされている人もいて勉強になる。読者の皆さんどう判断されるのか、これはお読みになってお任せします。

 長谷川氏にすれば、カトリックの聖職者の犯罪はカトリック教会の組織的問題で、これは旧統一教会どころの話ではないはずだ、という点にある(ま、こういった指摘をいつかするための情報収集だったわけで)。片や幼児性愛、片や霊感商法。それぞれむげに否定できない面があるとは言え、組織ぐるみ的な活動と、組織内での犯罪隠蔽を同列に扱っていいのか、このあたり庶民感覚と法的解釈では違ってくるだろうが、建て前論よりも現実を重視したい私としては、皆が皆そうとはいえないにしても、高位聖職者たちの無策振りまたは隠蔽行動は大いに問題視すべきだと思っている。

 とまれ、一部で予想されていた旧統一教会側の居直り暴露戦術(による、離反国会議員どもへの恫喝)が既に始まっているように、私には思われたのである。

 付言しておこう。現今の四面楚歌の状況は、旧統一教会側からすると、神から与えられた「試練」であり、事実無根の無碍なる「宗教迫害」なのである。当然のこと、初期キリスト教迫害もこのような視点で見直すべきなのである。

【追加】毎日新聞に南野教授がご登場。2022/8/30 「旧統一教会と政治:「難しい憲法の問題ではない」 憲法学者が指摘」(https://mainichi.jp/articles/20220829/k00/00m/040/123000c?cx_fm=mailhiru)但し有料。

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世界キリスト教情報第1649信:2022/8/29

≪ 目 次 ≫
▽キリスト教の「中国化」要求=共産党序列4位の汪洋政治局常務委員=党大会控え宗教界の引き締めか
▽教皇が韓国メディアKBSに訪朝意思示す=「招かれれば断らない」
▽教皇、伊中部ラクィラを訪問、地震被害からの復興励まし
▽教皇、9月カザフでロシア正教会総主教と面会せず
▽バチカン福音宣教省元長官ジョセフ・トムコ枢機卿逝去

  今回は最初のを。

◎キリスト教の「中国化」要求=共産党序列4位の汪洋政治局常務委員=党大会控え宗教界の引き締めか
【CJC】共同通信によると、中国国営新華社通信は、中国共産党序列4位の汪洋政治局常務委員が8月23日、北京で政府公認のキリスト教団体幹部に対し、社会主義を擁護して「中国化」の取り組みをさらに進めるよう求めた、と報じた。秋ごろに開く5年に1度の共産党大会を前に、宗教界の引き締めを図った。

 汪氏が会ったのはカトリック系団体の幹部。共産党の指導に従い、外国勢力の影響を排除して 国家の主権と安全を守るべきだと強調した。

 中国では非公認の地下教会などは取り締まりの対象となっている。イスラム教に対しても「中国化」を求めている。□
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詭弁をまかり通してどうする

 旧統一教会問題で、国会議員の弁解が判で押したように同じで、とてもうさんくさい。私のような昔を知っている老人だと見え透いたウソだとすぐに分かるのだが、若い人たちはやすやすと騙されてしまうのかもしれないが。

 昨日のBS フジテレビ「プライムニュース」(2時間番組)に登場した睾丸無比、もとえ厚顔無恥な萩生田の言い訳に日本の純朴な庶民はあっさり騙されちゃうのかな、と思いながら見ていたが、キャスターの反町の言動は一見舌鋒激しく迫っているようにみえて、しかしそれは表向きだけのことで、どうもゲストに媚びている印象を私は持ってしまった(でなきゃ、ゲスト出演なんかしないよな:女子アナが上智出身なので許したくなる、というのは全くの冗談ですが)。

 そこで話題となっていたのは、これは信教の自由に関わる問題で、とか、政治家と宗教の関わりの複雑さ(支援しますというのを政治家は無碍に断れない)であったが、いずれも詭弁で、じゃあいわゆる反社会的団体(暴力団)でも受け入れるのか、ということにもなりかねないわけで、支援団体との関係は政治家の「見識」が当然問われるわけだが、それを一般論で丸め込もうというのがキャスターとゲストの共通基盤に思えたわけだ[ただ、ゲストやキャスターの主張を垂れ流している日テレの「深層NEWS」(1時間番組)と比べて、短いながら視聴者の質問とか受け入れているはいい試みだ、と評価したい。辛坊治郎氏の頃の「深層NEWS」がなつかしい:https://friday.kodansha.co.jp/article/102173。そうそう国谷裕子さん時代のNHK「クローズアップ現代」も:https://www.excite.co.jp/news/article/Litera_2874/]。雇われキャスターの彼らがもろ政権への忖度で降ろされたのは、いつだったでしょうかねぇ。安倍亡き後これも思い出すべきだ。

 ところで旧統一教会は外国の宗教であるとちらほら言われ出しているが、そんなこと言ったら、仏教だってキリスト教だって外来宗教だし、日本の大手のキリスト教なんかは海外からの資金援助なしには立ち行かない面もある。私がそれなりに知っている範囲だと、上智大学(カトリック)にしろICU(プロテスタント)にしろ前者はドイツ、後者はアメリカの信者からの大型献金で設備充実させてきているのだし。

 統一教会の場合は、まるで逆で、日本の献金が韓国に流入しているのだが。

 〇 2022/8/19 青沼陽一郎「もしかして岸田首相はまだ気づいていない?カルトの手法に嵌められた自民党:萩生田氏の統一教会施設訪問、リークしたのは「教団関係者」の意味を考えよ」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71455)

 〇 2022/8/24 青木理「恥をかき捨て走る保身」(https://mainichi.jp/articles/20220824/ddf/012/070/006000c?dicbo=v2-aebe36482a46ace2e655b71383c38b90)

 〇 2022/8/25 新 恭「統一教会との関係に開き直る萩生田氏と安倍応援団」(https://mail.nifty.com/mailer/pro/mailview.html)

 〇 2022/8/25 塩倉裕 「フランスの厳しいカルト規制」:その「過敏さ」が映す日本の「鈍感さ」」(https://digital.asahi.com/articles/ASQ8S061NQ8PUPQJ001.html?pn=9&unlock=1#continuehere)

 私のそもそもの研究対象は、初期キリスト教がローマ帝国内でどのように地歩を勝ち得てきたか、にあるのだから、創価学会や統一教会、オウム真理教などには当然興味も関心もある。万が一、このテーマに関心ある向きがいらっしゃれば、修士論文以来のかつての拙稿をお読みいただきたい(とりあえず以下参照:「「ディオクレティアヌスのキリスト教大迫害」勃発原因をめぐって(三)」『上智史學』41, 1995, pp.1-32, esp., p.8:本稿は以下から簡単に入手可能:まず、https://digital-archives.sophia.ac.jp/repository/view/repository/00000009510に行って、一番下のダウンロード、200000020454_000070000_1.pdfをクリック)。

 その箇所だけ添付しておこう。一行目下からどうぞ。

 学界的には、キリスト教とローマ帝国といったテーマを扱う研究者はあたり前のことだが、そもそも信者やキリスト教シンパとして予め「洗脳」ならぬ「洗礼」を受けていたりするので、私のような視点は彼らにとってきわめて心外・論外で、表だっての批判よりむしろ無言の内に黙殺されてきた印象すらある。誰しも自らの魂の深奥に土足で入られることには不快感を抱く。それは研究者とて例外ではない。何ごとによらず宗教信条に従って現実社会で生き抜くことは簡単なことではないが、それを一般社会人のほうはよく知っている。しかし研究者などむしろ頭でっかちの世間知らずなので、頑迷でやっかいなことこの上もないのが実際なのだ。

【追記】同じ新聞社の記事なのに相反する内容のような気がするのだが。

 〇 2022/8/25 鈴木琢磨「旧統一教会に忌避感なき韓国:日本と異なる政治や社会との距離」(https://mainichi.jp/articles/20220824/k00/00m/040/278000c?cx_fm=mailhiru&cx_ml=article&cx_mdate=20220825)

 〇 2022/8/26 坂口裕彦「旧統一教会、発祥地の韓国でなぜ話題にならない?「日本と違う役割」」(https://mainichi.jp/articles/20220826/k00/00m/030/004000c?cx_fm=mailasa&cx_ml=article&cx_mdate=20220827)

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ウクライナ報道、その後

 こういった問題を善悪で論じることがすでにプロパガンダに乗っていることを知らなければならない。

 本来、両論併記であるべきものを、一方に肩入れして論じるのは少なくとも知識人の立ち振る舞いとしてはおかしいはずなのだが。

〇 8/18 田中宇「国際人権団体が批判、ウクライナの“自作自演”と腐敗が招く核惨事」(https://www.mag2.com/p/news/548962)

  8/17 田中宇「悪いのは米国とウクライナ政府」(https://tanakanews.com/220817ukrain.htm)

〇 8/24 岩佐淳二「「見つかったら殺される」脅された家族 ロシア占拠の原発一帯は今」(https://mainichi.jp/articles/20220823/k00/00m/030/023000c?cx_fm=mailhiru&cx_ml=article&cx_mdate=20220824)

  8/24 金寿英「「戦闘の年内収束、考えづらい」ウクライナ侵攻半年、小泉悠さんの見方」(https://mainichi.jp/articles/20220823/k00/00m/030/016000c?cx_fm=mailasa&cx_ml=article&cx_mdate=20220824)

  8/19 西村金一「ついに見えてきたロシアのウクライナ侵略失敗、本当の理由:非正規戦への過信で当初作戦に失敗、正規戦との連携が不発に」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71439)

  8/26 西村金一「攻勢に出る戦力がなくなったロシア軍、11月までに火砲を使い尽くす?:各種兵器の損耗率から見えてきたロシア軍の実態と戦況分析」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71526)

 8/25深夜0時から1時間、NHK Eテレ1東京で「島の戦争:なぜ住民は殺されたのか」を見た。これは、8/20放映の再放送。久米島に駐留していた日本軍の鹿山隊30名によって、昭和20年6-8月にかけて子供幼児を含む久米島島民20名がスパイ容疑で殺害された事例を取り扱っている。同じ日本人同士とはいえ、沖縄人や朝鮮人に対する差別意識や疑心暗鬼から、住民同士での密告すら生じ出しての悲劇となる。

 ウクライナ人やウクライナ東部のロシア人住民の悲劇は、身近な我が国でもあったのだし、戦争が起こればこれからもまた必ず生じるに違いない。

 【追記】そろそろ8月も終わる。ウクライナは続くが、日本の敗戦番組は一段落する。「2022年 夏のおもな特集番組」(https://www.nhk.or.jp/info/pr/toptalk/assets/pdf/soukyoku/2022/07/005.pdf)

 日テレ深層ニュースでの小泉発言を聞いていて、読み間違っていると思った。彼は最近のゼレンスキー大統領のクリミア奪還宣言を、戦局が有利になったのでと平面的にしかとらえていないようだが、あれは厭戦気分が生じだしている米欧側を叱咤し、一層の武器貸与を求めるための発言のはずだ。すでに国家的には破綻し自力では勝利できない状況で、米欧の援助なしには敗北は必至なのだから。ところが米欧の思惑はウクライナとは異なっているので、ずるずる膠着戦に移行していくしかないわけで。別のニュースでも日本でのウクライナ援助の募金もすでに途絶え出し、NPO運営も困難になっている由。

【追記2】2022/9/7:「ウクライナはかつての敵にあらず、ロシアの大誤算は電子戦:安易な侵略許した2014年クリミア戦の猛省から大変貌遂げる」(https://www.koji007.tokyo/wp-admin/post.php?post=27366&action=edit)

 私のような素人でも、第2次世界大戦で有効だった戦車戦への対抗手段がすでに開発されていて、無効化されていること、サイバー戦が現在の戦闘の帰趨を制していること、は理解できる。技術の進歩が即刻金の糸目をつけずに投入されるのが軍事である。

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今度は中流階級の住居出土:ポンペイ

  継続発掘されているポンペイ近隣のCIVITA GIULIANAで、奴隷の部屋が出土したという報告があったが(2021/11/6:http://pompeiisites.org/en/comunicati/the-room-of-the-slaves-the-latest-discovery-at-civita-giuliana/)、今度はポンペイで、中流階級の家が発掘されたとの報告が、2021/8/6になされた。

 このところ継続的に発掘がなされているポンペイの第5地区で、2018年に豪華なララリウムの祠と驚くべきフレスコ画が出土した「魅惑の庭の邸宅」(https://www.pompeiiinpictures.com/pompeiiinpictures/R5/5%2003%2012.htm#lararium)の奥を掘っていたら、予想外に質素な部屋が4つ出てきた。発掘者たちはそれを中流ないし下層民の住居と断定した。例によって発掘地点は明示されていないが、V.3.12.13付近と思われる。

今回の質素は部屋は破線の凸部分付近と思われる

 従来豪華な邸宅に目がいっていた研究者たちも、最近は中・下層民や奴隷の日常生活に興味を持つようになってきていたが、そこに今回の発掘は絶好の傍証となったわけである。これらの部屋の壁は漆喰だが剥き出しで、床も土間のままだった(こういった部屋は従来もポンペイから出土していたはずだが、出土品も日常使いのものだったのでこれまでは美術的に無価値と断じられ蔑ろに扱われ、処分されてきていたのだろう:処分の内実とは、例によって闇市場に横流しされ、好事家やマニアの手に渡っていったことを含めてのこと)。

 ある部屋には、2000年間開けられなかった食器棚があり、中にはガラスの皿や陶器の鉢、花瓶などの食器がそのまま入っていた。別の部屋には、装飾品が残されたテーブル、ベッド、トランク型の箪笥があり、その中からみつかったものの中には、古代ギリシアの神ゼウスが鷲に変身した姿を描いた浮き彫りが施されたオイルランプがあった。

たぶん食器棚からの出土品:日常品のガラスや陶器の器類
この写真はたぶん「寝室」かと;右は上から部屋全体を俯瞰した写真
左写真の左側が、石膏で復元され蓋のない箪笥、右側が三脚の円卓:右写真、箪笥から出てきたオイルランプ

 以下も参照。https://karapaia.com/archives/52315493.html

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世界キリスト教情報第1648信:2022/8/22:干上がるエデンの園

≪ 目 次 ≫

▽「世界に人間への情熱を広げよう」教皇、リミニ・ミーティングにメッセージ
▽エジプトのコプト教会、礼拝に5000人以上集まった中で火災
▽エジプトのコプト教会火災でイスラム教徒が子どもを救出
▽サッカー選手モハメド・サラーがエジプトの教会火災に約2000万円寄付
▽旧統一教会がソウルでデモ、日本メディア非難、安倍氏追悼も
▽世界教会協議会代表団がウクライナ訪問
▽「悪魔の詩」の作家ラシュディさん刺傷、「本人と支持者に責任」とイラン外務省
▽「エデンの園」あったイラク・メソポタミア湿地帯干上がる

 今回は、旧統一教会関係を紹介したかったが、内容があまりに簡明なので、最後のにしてみた。

◎「エデンの園」あったイラク・メソポタミア湿地帯干上がる
【CJC】チグリス川とユーフラテス川に挟まれた地域、イラク南部のメソポタミア湿地帯は、旧約聖書の「エデンの園」があったとされる。2016年には国連教育科学文化機関(UNESCO=ユネスコ)の世界遺産にも登録された。

 しかし、この肥沃(ひよく)な土地が干上がっている。3年にわたる干ばつと少雨、そして隣国トルコやイランを源流とする河川の水量減少が原因だ、とするAFP=時事通信の報道を紹介する。

 オランダの平和団体PAXが行った衛星データに基づく評価によると、2020年8月からの2年間で、フワイザ湿原やチバイッシュ湿原などイラク南部の湿地帯の46%で地表付近の水が完全になくなった。さらに41%で水位や湿度の低下がみられた。

 国連食糧農業機関(FAO)駐イラク事務所は、湿原地帯はイラクで最も貧しい地域の一つで、6000世帯以上が壊滅的な被害を受け、「生活のための唯一無二の資産である水牛を失っている」と指摘した。

 イラン国境にあるフワイザ湿原にも大きな影響が出ている。イランの水管理当局の責任者は、さまざまな対策を講じているが、50度を超える気温の中で「蒸発量を補うことは不可能だ」という。□


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ポーランドの古代ローマ史本

 私のゼミ生で現在ポーランドに在住しているH君経由で、以前お願いしていたポーランド語の本が、彼が一時帰国したので、届けられた。新コロナの関係で郵送もままならず、送料もバカにならなくなるとのことで、一時帰国での持ち帰りをお願いしていたものだった。その書籍は以下。Andrzej Wypustek, Imperium Szamba ścieku i wychodka :Przyczynek do historii życia codziennego w starożytności, Warszawa, 2018, Pp.223.  だいたいの訳は「(ローマ)帝国の下水とトイレ:古代における日常生活」といったところか(ただしグーグル翻訳からの想定。古代ローマトイレ研究の先進国はオランダなので、これまでそっちは若干集めてきたが、ポーランド語はまあお愛嬌ということで)。

 今回なぜか売価が定価の半額で、H君の計算によると14.78zlで、昨日のレートで1円=00.35zlなので426.53円、日本での我が家への郵送料がゆうメールで310円だったので、まあ750円程度。確かにこれではポーランドからまともに送ってもらうと送料がかなりかかりそうである。

 紙装のB5版でこの値段なので、日本よりも圧倒的に安い、というか、なんで日本は本が高いのだろうか。装幀や紙質もかつての東ドイツに比べると普通にまともだし、15葉の白黒写真も挿入されている。問題は、註記・参考文献がなくて、その代わりにホメロスやアリストファネスなんかの原典引用は章節付きで本文中にポーランド語訳で掲載されてはいる。

 その本の所在を知ったのは、ポーランド人が管理者している古代ローマ史関係のWeb「IMPERIUM ROMANUM」をチェックしていて見つけたもの(https://imperiumromanum.quora.com/)。本当はもうひとつ、同じ著者による性生活がらみの本もヒットしたのだが、残念なことにそっちは2020年出版なのに既に売り切れ状況。どこでも皆さんの関心はご同様のようで。

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今日の「深層NEWS」:ヤマザキマリ論

 アルコール抜きだったのに夕食後うとうとしている内に視聴予約しているこの番組が始まってしまったので、最初を聞き逃してしまったのだが、キャスターの鈴木あづさがいつもより生き生きした感じで、その声に触発されて目が覚めて見たのだが面白かった。ゲストは養老孟司とヤマザキマリ。彼ら両名の対談が6月に出ていて、ということで、じゃあ購入してみようかな、と。

文藝春秋、2022、¥1650

 Amazonのカスタマーレビューで斉藤健志氏が指摘していたことだが、マリが「思想を言語化して発言しまくっている」イタリア人のような民族は、「活字化された言葉」に答を求める日本人が本に依存するような姿勢を持ち合わせていない、といった類いのことを本の中で言っているようで、これは確かになかなか含蓄に富む言葉だと思う(となると、イタリア人にとって文字化とはどういう意味を持つのかが逆に問われなければならないが)。

 また彼はマリの発言を「粗削り」と評しているが同感である。というよりも、彼女は体験に根ざした発言に終始しているので、そこに緻密な論理構成を求めるのはお門違いというべきだろう。

 しかし往年の「だから日本人はダメ」的な上から目線の塩野女史とくらべて、「それぞれの歴史がそうしかありえなかったのだから、そんなジャッジはおいそれとすべきではない」という立脚点は一層高く評価されてよい、と私は思う。

 だがしかし、となると彼女の言説を読まされる日本の読者は活字化された言語を喜んで受け入れる日本人の特性を助長はしていても、彼女を見習って性格改造するには結局至らないのだろうな、とも思ってしまう。そう、誰も自己変革などする気はないくせに、民族的な習性へ流れ込むことで、一種の安心立命を得て自己満足しているような気がする。

 そして思い至るのは、このブログもそうだが、文字化している私の営みの原動力や目的は何なのだろうか、という見返しである。

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インパール関係のNHKスペシャルを見た

 8/15深夜と夜、2回連続でインパール関係でNHKスペシャルがあった。「戦慄の記録 インパール」(2017/8/15)、「ビルマ 絶望の戦場」(今回初回:再放送、8/17NHK総合1・東京・午前2:37−3:38)。

 もちろん日本軍兵士にとって悲惨な出来事だったわけであるが(友軍内での盗みはもちろん、人肉嗜食も登場)、私に示唆的だったのは、後者の中での、イギリス第14軍司令官 Wiliam Slim の言だった。

William Slim  (1891-1970) :彼は苦学して軍人となった苦労人で、グルカ連隊他の混成軍を育成・統轄しえた。最終階級は元帥、子爵受叙。小説も書いていた由。実に興味深い人物だ。ところでこの写真の帽子、ひょっとしてグルカ帽?

 「日本軍指導者たちには、根本的欠陥があるように思える。それは道徳的勇気の欠如である。彼らは自分たちが間違いを犯したことを認める勇気がないこと、計画が失敗し練り直しが必要であることを認める勇気がないのである。」

 彼の場合、現場指揮官に権限を委譲して、それが成功に結びついた由であるが、日本軍の独断専行とどう違っていたというのか。結局は責任の取り方が違っていたのだろうか。

 いわゆる陸軍士官学校出や海軍兵学校出の軍人エリートたちで司令官(中将)や連隊長(大佐)や参謀(少佐)に登り詰めた人が、なれ合いでの立身出世や料亭での芸者遊びの接待に明け暮れたたかりと忖度野郎だったということか(もちろん例外もいる)。しかしこんな上官を持った兵は災難である。あれこれ憤懣を書き残しているのは学徒出陣で若くして最前線で散華させられた文系の大学生(少尉)だったりする。

 8/14夜には同じくNHKで「沖縄戦孤児」を見た。この再放送は、BS1 スペシャルで、8/18午前9:00−10:50

 同じくBS1スペシャルで、「戦火の中の僧侶たち:浄土真宗本願寺派と戦争」が8/20(土)21:00−21:50に放映予定。鵜飼秀徳『仏教の大東亜戦争』文春文庫、2022/7/30、に関連している内容と想像。もちろんこういった戦争協力は仏教界に限ったことではなかった。キリスト教とて同じだったのだ。

【追記】責任回避根性は、なにも旧日本軍の将官に限られたものではない。

 2022/8/24:玉村治「一度決めたら変えられない 日本で続くコロナ対策の失敗」(https://wedge.ismedia.jp/articles/-/27682?utm_source=newsletter&utm_medium=email&utm_campaign=20220824)

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