ケルト・メモ:(3)ストーン・サークル研究の今

3月23日土曜 BS4K 午後5時30分~ 午後7時30分  奇跡の巨石文明! ストーンヘンジ七不思議

 橋本環奈が“不思議の扉”を開く! イギリス巨石文明のシンボル「ストーンヘンジ」に秘められた七つの謎を最新科学で徹底解明! 誰が何のために? 人類究極のミステリーに迫る橋本環奈が“不思議の扉”を開く! 伝説と神話に彩られたイギリス巨石文明のシンボル「ストーンヘンジ」。大人気の世界遺産に秘められた七つの謎を最新科学で徹底解明! 数千年の時を超えた“驚異のテクノロジー”が判明! 古代人が仕掛けた“視覚トリック”の正体とは!? 誰が何のために築いたのか? 古代文明の存亡を賭けた壮大なドラマに、最新科学が鋭く切り込む。絶景のストーンサークルも続々登場! 人類究極のミステリーに迫る!

【司会】橋本環奈,【ゲスト】サヘル・ローズ,荒俣宏,松木武彦,志村史夫,山田英春,【アナウンサー】魚住優

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 これを私は後半の1時間だけ見ました。BSはなんども再放送しているようなので、運良ければまたみることできるでしょう。充実した2時間番組のように思います。

 古代ブリトン人は石器時代の担い手だった。その際、貴重な資源となったのが、フリントだった。石英で白色に光るサーセン石で造られたストーンヘンジは墓であると同時に儀式の場所だった。その儀式の中心は、冬至における日没で、それを確認することは太陽の再生を確認するために重要だった。そして古代人にとって太陽運行も星座も円環運動だったので、これも最古の世界観として「円」が、再生の象徴だったのである。ストーン・サークルが巨大化したのは前2500年頃で、これは、その頃地球規模の寒冷化が襲い、農業危機が訪れたことに起因して、太陽の再生を願ったためだったのであろう、と。冬至がその中心で、人々は巡礼してここに集合したが、そのときストーンヘンジの向こう側で西に落ちる太陽をみたであろう参道も発掘発見されている。

 DNAの調査で、巨石文明の担い手の古代ブリトン人が、今から4000年前に渡来したビーカー人とあっという間に入れ替わったという現象を、ビーカー人が大陸から疫病を持ち込んだせいと想定していたのは興味深かった(どっかで聞いたことある話だ)。たしか原聖氏の『ケルトの水脈』(講談社、2007)では、武力とか人的移住ではなく文化受容による変化だったとしていたが、疋田隆康氏がそれはありえないだろうと書評で書いていた記憶がある(『西洋史学』229, 2008)。テレビでは、それに加えて青銅や金の金属器を持ち込んだのが決定的と言っていた。これはまあ理解できる。

【後追い1】以下を見つけました。4/20:ストーンヘンジは誰が作ったのか?現代の遺伝子解析がその謎に迫る(英研究)

https://www.excite.co.jp/news/article/Karapaia_52273377/

【後追い2】6/22:NHKオンデマンドで、上記のビデオを見た。そこで最初あたりで、日本人のゲストの考古学者が、いかにも新しい学説のように喋っていて、私に奇異だったのは、「巨石文明の原点はイギリスだった」という件である。というのは、私は1995年翻訳出版されていた、ヘルムート・トリブッチ(渡辺正訳)『蜃気楼文明:ピラミッド、ナスカ、ストーンヘンジの謎を解く』工作舎(原典:H.Tributsch, Das Rätsel der Götter: Fata Morgana, Ullstein Verlag, Berlin, 1983)で、すでにその説に触れていたからだ(但し、トリブッチの主眼は蜃気楼の話のほうにあったのだが。この本の巨石文明の新説に驚嘆した私は、授業の必読書にしていたのだが、どれくらいの学生が読んでくれたのやら:この本、図書館には入っていた)。

 ま、あの考古学者は日本が専門のはずなので、かの学説が、邦訳で25年前、原著だと35年も前に出ていたことをご存じなくてもしょうがないが。それにしても、なんだかなと思ってしまう。専門家というよりバラエティ番組というべきか。こういう番組が最近多すぎる。

 あと、石器時代の古代ブリトン人は平等だった、金属器時代のビーカー人は階級社会だった、それをよしとしなかった古代ブリトン人は消え去っていった(それは暴力的に激しく劇的な変化だった)、ということを強調していたが、まあケルト人との関連で古代ブリトン人は他と比べて多少は平等の傾向はあったかもしれないが、これは程度問題にすぎず、かなり強力な指導者抜きにストーンヘンジのような大規模は工事はなしえなかったのでは、と私など思わざるを得ないのだが、どうだろう。考古学の仮説にはときどき研究者の希望的観測が封入されているような気がしてならないのだ。

ターナー「ストーンヘンジ、ウィルトシャー」 1827~28年 ソールズベリー博物館 On loan from The Salisbury Museum, England

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