【追記】昨日登学してついでに調べたら、以下でもすでに1箇所トイレとされていた。J.Humphrey, Roman Circuses:Arenas for Chariot Racing, London, 1986, p.109. “Lastly, a drainage canal linked to an earthernware pot (a possible latrine) was found in bay F (fig.44)”. その意はおそらく、放出された小便は縦樋で地下に設置された土器製容器に収集されていた、ということだろう。ちなみにfig.44でのその場所Fとは、上記平面図で右から2つめの表記「urinal?」である(Humphreyは他は無視し、壁関係の測量結果も異なっている)。
というのは、ポンペイでは城壁沿いに12箇所の塔が指摘され一部復元されている。以下はIX.8.3「Casa del Centenario」から出土した多色テッセラによるメドゥーサ頭部を描いた床モザイク(現在はナポリ考古学博物館所蔵)の上下に描かれた四角枠の片方が、その城壁塔を彷彿させていて、私の興趣を否応なく刺激するのは、もう一方が港風景で、往事のポンペイ都市の特徴を彷彿させているからでもある。いずれ小論を書きたいテーマであった。
さて本論である。この城壁塔とは異なり、今回2025/10/20にポンペイ考古学管理事務所よりE-Journalで発表されたのは、さながら中世都市ボローニャやサン・ジミニャーノのように、超富裕層の邸宅に高塔があったのでは、という仮説の提示である。この情報に日本語で簡単に接することできるのは、「ARTnews Japan」である(https://artnewsjapan.com/article/50447)。件の邸宅は北側がVia Nolaに面し、番地としてはIX.10.3が振られ、とはいえ本格的な発掘は2023年に開始されたばかりで、そこからごく最近ディオニュソス秘儀のフレスコ画が出土した(https://artnewsjapan.com/article/25168;https://www.youtube.com/watch?v=WMK1ns5oiW8)との報道が本年3月になされ、それにちなんで「Casa del Tiaso、Domus of Thiasus」(ティアソスの邸宅)と命名された。もちろん一般観光客はまだ見学不可である。なにしろ発掘途中なので、不明点も多いが速報レベルで告知しておく。
ケータイの画像を調べていたら、ローマの国立考古学博物館・マッシモ宮の最上階はフレスコ画中心の掲示になっているが(最大の見どころは、Villa di Liviaのそれだろうが)、Villa della Farnesinaの寝室Dを入口から覗いていて気づいて撮っていたのをみつけた。たぶん夫婦の寝室なのであろうが、部屋の三方の壁の中央の嵌め込み壁画がどうやら連続画になっているようで、なにぶん角度と距離あるのでうまくは撮れてないが、なんとか撮れたものを繋げると以下のごとし(本当は、初夜を前にして新婦が一人で物思いにふけっているのが最初だけど、角度的にうまく撮れないのが残念。それにエロテック情景のせいか、インターネットはおろか各種カタログなどに掲載されていないようだ)。