映画「Perfect Days」を見てきた

 豊島園駅のそばには「ユナイテッド・シネマとしまえん」があって、そこで上演していたので、妻に声をかけていっしょに見てきた。予備知識としては役所広司が主人公ということだけ知っていて、しかし麻生裕未や三浦友和、そして田中泯の出演はまあ想定内といっていいだろうが、さりげなく石川さゆりが登場したのにはいささか虚を突かれた。あの声量はやはり常人ではない。

 そしてなによりも主人公が作業車に乗ったときに古いカセットテープから流れ出る音楽の鮮明さは印象的だった。それは監督が欧米人だからの感性なのであろうが、それに映像として「羅生門」以来の日本人の感性とされるようになった木漏れ日がくり返し映し出されるしかけだ(だが、やたら白黒のコントラストを強調させた映画「羅生門」と違って自然光で撮っているので、そうインパクトを感じることができない恨みが残ったなあ)。

 そして私が観賞する気になった渋谷区のトイレの数々。世界に誇る日本のトイレ水準と、それを日常的に維持している掃除員の手作業の対照、それに銭湯でこれもさりげなく見せる主人公のもう若くない肉体による、先行きの不透明さ。そんな平穏な彼の日常的ルーティーンを破るのが、他ならぬ肉親の闖入と仕事上のシフトの混乱というのもなかなかリアルな設定ではあった。

 ま、しかし、これが人生さ、それでいい、といわんばかりのエンディング。無口な彼が発した唯一の意味ある言語「今度は今度、今は今」もそれに通底しているようだ。

 ところで1100円だっけで購入したパンフレットの表紙、「PERFECT DAY」となってたぞ。そこに書いてあったロケハンの日数たった16日には驚いた。ドキュメンタリー方式だからできた技にしても、それ以前の緻密な事前調査なしにはありえなかったはずだ。スカイツリーや隅田川や桜橋の円錐形オブジェ、それに浅草の地下街とか、外国人(観光客)を意識した映像も各所にちりばめられていて、私は聖地巡礼したくなった、しないだろうが。

 

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