ローマ時代の磔刑についての新説

 2021/6/2付でのBiblical Archaeology Societyから送られて来た情報「Roman Crucifixion Methods Reveal the History of Crucifixion」が興味深い。読者のコメントもすでに69に及んでいる。要するに1985年に提出されたローマ時代の磔刑の実際に対する批判に基づく新説で、端的にいうと、以下の図の左から右への変化である。

 私は以前の小稿(「ローマ時代の落書きが語る人間模様」上智大学文学部史学科編『歴史家の散歩道』上智大学出版、2008/3/31、pp.283-300)で、付帯的にではあるが、いわゆる旧説を紹介したことがある。新説のキモは、以前の唯一の出土諸資料(骨、木片、釘)の再検討によって、両手首は釘で打ち付けられてない、諸足首が一本の釘で打ち付けられていない、という点にある。

ひとつだけ付言しておく。よく巡礼たちがエルサレムでイエスの真似事やっていて、via Dolorosaで片々とした十字架を軽々と担いで錬り回していたりしているが、あれはカトリック教会堂内の「十字架の道行き」via crucis なんかの影響での誤ったイメージで、実際は、処刑場には縦棒が常設されているので、死刑囚は横棒だけ両手にくくりつけられて運ばされ、処刑場に着くと横棒ごと縦棒にひっかけ上げ下ろしさられていたらしい(ヴァリエーションは各種あるだろうが)。

 上図は、処刑場についてからのプロセスを描いたものだが、両手首への釘打ちについては旧来の説に依拠しているわけだ。

 詳しくは上記のデータをググれば容易に英語原文に行きつけるので、それをDeepLなどの翻訳ソフトにかければ簡単に邦訳できるから、是非試してほしい。私が最近煩瑣に新情報を掲載できているのもそのお陰である。いちいち辞書ひかなくていいし、それよりなにより翻訳文をちまちまと打ち込まなくていいので、楽である。

 だけど、修業時代の若い人に真似してもらいたくないような気もしているが、労力削減には目のない彼らのことだ、演習などでもう十二分に活用しているに違いない。だったら大量読破でより角度と内容のある卒論・レポートの量産に励んでほしいと私など思ってしまうが、何のための労量軽減かというと彼らの目的はそこにあろうはずもないのだから、実力の低下は目に見えているだろう。ああ。

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