ローマ軍ドラゴン旗について

 ポーランドのブログ「IMPERIUM ROMANUM」をチェックしたら、「ドラゴン旗」dragon standard を見つけた(2024/3/24)。

Roman dragon head | Photo: © Generaldirektion Kulturelles Erbe Rheinland-Pfalz:30x12x12 cm

 このブログはご多分にもれず新発見報告でもないし、短い説明が多い。せいぜい以下の程度の叙述なのだ。

 「青銅製のローマ時代のドラゴンヘッド。 この物体は西暦 2 ~ 3 世紀に遡る。 Niederbieber(ドイツ)で発見された。 この工芸品はローマ騎兵隊の旗を飾り、一人のdraconariusによって運ばれた。

 風がドラゴンの茶色の口を吹き抜け、今日の空港の吹き流しスタイルで布製の尾をはためかした。 敵を威圧するために、ドラゴンの首に笛が取り付けられ、疾走中に不気味な音を響かせたと考えられている。」

疾走中の保持には、風圧もあってかなり腕力が必要だったようだ

 付加すると、このNiederbieberのドラゴン旗、これまで発見された完品で唯一の存在。音を発する仕組みはよく分かっていないようだが(そもそもあったのか、私的には若干疑問)、中国発祥の凧の音声発生装置がらみの先行例もあって、それが西漸し元々はスキタイ草原地域のステップ遊牧民のものだったが、トラヤヌスのダキア戦争あたりでローマ軍にその存在が認知され、その後補助軍の騎兵隊に採用され、後期帝国では軍団の大隊cohort旗になったとか、弓兵隊のため風向きを探る目的もあった、否、単なるおどろおどろしい風変わりな所属部族のトーテムだったのだ、と様々に想定されているようだ。

 多くの文字情報のみならず、かつて私が触れたことのあるコンスタンティヌスのアーチ(アーチ東面のローマ入城式で、騎兵隊の頭上に飜っていたのは象徴的)をはじめとするレリーフ等の画像でも表現されていて、魅力的な研究対象となりえ、私自身も今回かなり集めたが(ガレリウスのアーチにもあったのは不意打ちだった)、後進に残しておこうかな(http://www.fectio.org.uk/articles/draco.htm)。また、造形もドラゴンに限らず、野生動物や魚だったりもする。なので、研究者はこれを「dragon」と表記せず総称的に「draco」としているようだ。

 一つだけ付け加えて置くと、紀元前のケルト人が使ったカーニクス carnyx という管楽器(音響兵器)は演者が吹いて音を出すので、基本的に構造が違っているが、不気味さではこっちの音が勝っているように思う。その音声は以下:https://www.youtube.com/watch?v=auR-lJfzTeY&t=15s;https://www.youtube.com/watch?v=X3NUniNi43s

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