Oplontisの希有なトイレ:トイレ噺(26)

 エルコラーノのトイレ話を書いていたら、思い出して。OplontisのVilla di Poppeaには、意表をついた隠しトイレがあるので紹介しておこう。

中央サロン(下図での24)から両翼に広がる邸宅に向かって、右端の坂を下っていく。

 この別荘、皇帝ネロの愛妾ポッパイア所有と言われているだけあって、鮮やかな色彩の剛胆ともいえる壁面絵画が目を奪うが、正面左にみえる列柱廊の裏側に、共同トイレ(下図左での21;右図だと44:平面図は上記写真とは方向が逆になっていることに注意)があって、そこには下図では右方向から入って行けることが見てとれよう。そしてさらによく目を凝らして見てほしい。馬蹄形をした通常の共同トイレを示す番号(21)に重なって手前に狭く細長い空間があることに(右図では44の下)お気づきだろうか。

右はその拡大図で、トイレは(44)

 上記写真が馬蹄形の普通の流水型共同トイレで、往時は木製の便座があったと思われる。室内に外光は直接入らずほとんど真っ暗。手前右端の構造物は水槽の縁。ところでここに至る通路が右手前にあって、それを逆にトイレ側から写した写真が下図である。そこでは左側に出入りする通路が伸びている。手前左下に見える構造物は水槽の縁。

 問題は、侵入禁止の木製扉が壊れてたてかけてある箇所で、そこを覗いて右向きに撮った写真が以下である。ついでにいうと、ここはさらに真っ暗闇である。

ただ左壁に沿って深い溝が区切られているだけ

 溝の上の壁に便座を設置した痕跡はない。すなわち、男子用の立ちション用便所である。要するにここでは、共同トイレの手前に男子専用の立ちション・トイレが立地している希有な例で、私の知っている数少ない男子専用トイレである。それにしても、両トイレとも閉鎖空間なのでいかに流水型とはいえ、往時においてはかなり強烈に異臭がただよったのではないか。華麗を極めた豪邸のすぐ背後の思わぬ秘め場所である。なぜこんなややこしい場所に作ったのだろう。私には賓客用とは到底思えず、従業員の奴隷や被解放奴隷専用だったと断じたいのだが、どうだろう。ひと言申し添えておくと、この邸宅、今のところ他にトイレ構造は残っていない(完全に発掘されているわけではないが)。

 なお、Pompeii in picturesの中では(https://pompeiiinpictures.com/pompeiiinpictures/VF/Villa_055%20Oplontis%20Villa%20of%20Poppea%20p12.htm#_Room_47:_Latrine)、この横長トイレを女性用、馬蹄形のほうを男性用と表記しているが、納得できない。

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