ローマ時代のエロ本?:遅報(50)

 奴隷関係をググっていたら、遅ればせながら偶然以下がヒットした。あれ、これまで気付いていなかったのはなぜ、というわけでさっそく古書で注文した。トゥリヌス(烏山仁・翻案)『ローマ式奴隷との生活』三和出版、2016。なんと注文して翌日に速攻で送られて来た。

 購入前は、ほぼ同時期に出版された『奴隷のしつけ方』太田出版、2015;『ローマ貴族9つの習慣』太田出版、2017、と同様のものかと思っていたが、来たモノは大変なきわものだった。前2冊は、一応ジェリー・トナーなる西洋古典の研究者で、ケンブリッジ大学教授が、マルクス・シドニウス・ファルクスなる著者をでっち上げての、まあ偽書なのであるが、そのことをちゃんと明言している潔さがあったし、内容も高度だった。

 今回のトゥリヌスの口上は、翻案者によると、古代ローマ時代の文筆家(生没年不明)による『奴隷娘たちとの生活』Vitae cum Selviris からの翻訳、ということになっていて、斯界では著名なA氏が写本と彼の訳を持ち込んできたことになっている。本物にみせるための道具立てとしてもっともらしく、それなりに詳しい解説メモ付きであるが(その努力賞として星2つ)、本文はまあトンデモ本とでもいうべき偽書であろう。

 そもそも書名のラテン語の綴りが間違っている。「奴隷女」のラテン語は「serva,ae」で、前置詞cumは奪格要求するから、複数奪格だとservisだし、「若い女奴隷」だと「servula,ae」のはずだから、「servulis」とするのが普通だろう。間違っても「selviris」ではない。翻案者は気付いていないのか、読者を小馬鹿にしての手の込んだ仕掛けなのか、ともかく本書の表題を書いた御仁は、私並にラテン語に詳しくないおっちょこちょいなのは確かである。それに著者名のトゥリヌスから、私などつい想起するのはかの有名なMarcus Tullinus Ciceroであるからには、まあこれも意図的な作為的命名であることは明らかだろう。読者を騙してほくそ笑んでいる翻案者なりA氏のしたり顔が目に浮かぶようだ。

 以下蛇足である。我が国には大場正史大先生訳の、F.K.フォルベルグ『西洋古典好色文學入門』桃源社、1976年(原著出版、1882年)がある。全訳ではないが、碩学によるこのド真面目な本を読む方がよほど劣情を刺激するはず、少なくとも私にとっては。ところで、大場正史はこれまで筆名だと思ってきたが(昔それなりに調べたはず)、今回念のため改めてウィキペディアを検索してみると、1914/1/1佐賀県生まれ-1969/7/17死亡、と実名扱いになっていたのには、いささかビックリだった。

Filed under: ブログ

コメント 0 件


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Comment *
Name *
Email *
Website