17才で夭逝した研究者、宮内和也君:遅報(11)

 昼ご飯でチャンネル変えていると飛び込んだNHK BS4の、「これが恐竜王国ニッポンだ」の再放送の後半をちょい見。8日にも再放送ありとか。

 何に感動したかって、8才のとき小児ガンを告知された岸和田の宮内和也君が、限られた人生の中で目標を近くで発掘されたモササウルスに絞り、闘病しながら画期的な成果をあげたこと。だが、彼は古生物学会で発表の数ヶ月後の2007年に17才で死亡した。

 画期的な発見とは、彼が中学から高校生になるころ、その骨格模型を木製で自作するなかで、モササウルスが獲物を大量に丸呑みするために大きな水流を起こす顎の仕組みを解明したこと。私が思うに、これは、彼が模型を自作する中でこそ初めて気付くことできたのではなかろうか、と。

中央の少年が宮内君。その左奧にみえるのが自作模型の発展形かと。隣はお父さん:http://geoca.org/2005geo-mosasaurusu.htm

 大人の研究者は自作なんかしないで、出土品の設計図(2次元)を下請け業者に出して、もっともらしい復元像ができてめでたしめでたしと終わりにするところを、いかにも10代の生徒らしく模型作っちゃろ(3次元)、と木製であれこれやっているうちに、顎が開く仕組みに気付くことできたのでしょう(https://kishibura.jp/blog/umeda/2010/12/post-181.html)。

 以下に、モササウルスの想像図(https://www.nhk.or.jp/vr/AR/mosa/3D.html;https://www.gibe-on.info/entry/mosasaurus/)

 そういえば、研究者たちこれまで恐竜化石の骨格ばかりに目が奪われていて、骨格の中に埋っていた夾雑物は捨てていたが、待てよと思ったある研究者がそのまま透視してみたら、そっから内臓とか胎児の化石がみつかった、という、なんともあんぽんたんな話も最近どこかのテレビで見た記憶が。これじゃないけど→:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/4717/;https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/021600057/

 初心に還る、べし。  ところで教育って、なんなんでしょうね。以下、引用です。

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岸和田の「高校生にして研究者」との出逢い(2016年02月13日):https://www.r-ac.jp/campus/osaka/blog/cat/jtakeuchi/2489.html

 「その高校生の名は、宮内和也くん。小学生の頃から化石の研究に目覚め、科学者としての道を歩み始めていました。が、10年間に及ぶ闘病生活と研究生活が同時進行し、2007年に17歳の若さで夭折されました。限られた時間の中、彼は絶滅した大型爬虫類の モササウルス(名前に反して恐竜でない)の研究、特に骨格標本を基にした古生態学的な研究活動に邁進し、彼が駆け抜けて行った人生を懐い、今からの混迷の時代を生き抜く高校生諸君の指針にさせて戴きたく以下、彼の遺志を取り継ぐ気持ちでいます。

 彼の足跡は、きしわだ自然資料館の2階にモササウルスの常設コーナにありました。私も早期に科学研究に目覚めた方ですが、それでも中学に入ってからのことです。それゆえ日本の学校敎育で自分で好きなコトを貫き通すことのシンドさはイヤという程、経験してきました。明らかに学校が求める学力と研究者としての能力との間に乖離があるからです。これは、成績を上げて大学進学を決めてきた偏差値秀才の方には理解が及ばない苦難です。そこを、宮内くんは迷わずわが道を歩みました。私はそれが痛いほど分かります。」

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 このコメントの後半には大いに共感するものがあると同時に、ひょっとして人間っておおざっぱにいって平等なんじゃないかと妄想もしてしまう。平々凡々と生きてしまう、いや生きざるを得ない、そのように生きることを期待されている一応五体満足な、圧倒的に多数を占める我ら凡人は、いわば日常的業務にいそしむ没個性的な働き蟻で、大きな流れの維持に貢献しているとはいえ、歴史にこれといっためざましい爪痕も残すことなく、マスの一員としてあえなく忘却の彼方に消えてゆくのだ。

 ダ・ヴィンチについての医学的新知見(ADHD=注意欠陥多動性障害、読字障害、斜視)なんかをみてると、さながら障害のオンパレードで(https://www.carenet.com/news/general/hdn/48125)、「天才」「才能」とは、非日常的な規格外の「異人」「異能」に通じているような気がし出す。ごく限られた少数派にすぎない彼らにとって、自分の宿命との対決が常人には想像を絶する壁となっていたはずで、それに打ち勝ってこそ名を残し得たのであろう。障害とか劣等感に苛まれるのではなく、それをかけがえのない自分だけの個性として生かす道を探ること、が閉塞状況からの打開策になるはずであろう。

 ちょっと論点がずれるかもしれないが、最近その存在が確認された働かない蟻=フリーライダーの存在に注目していきたい(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/48850;https://ja.wikipedia.org/wiki/働きアリの法則)。

【追記】2019/8/27-8の深夜、福山雅治主演の「ガリレオ」(2013年 第11話「聖女の救済」)を見ることなしに聞いていたら、「今から13年前、それまで無駄なものとして捨てていた恐竜の骨格内部の土をそのままCTスキャンしてみたら、3次元画像で心臓そのものが出てきた」と。私の情報源はどうやらこれだったようだ。(^^ゞ

【追記2】「注目の人 古生物学者/佐藤 たまきさん:気が付いたら恐竜が好き。首長竜(くびながりゅう)の研究で猿橋(さるはし)賞を受賞」(https://www.wendy-net.com/nw/person/335.html)

 文系だったのに、子供の頃から好きだった恐竜研究をしたくて、理学部に入るために苦手の数学をなんとか克服し、夢をかなえることができた頑張り屋サン。

 私はいま、ピーター・ラーソン、クリスティン・ドナン著 (池田比佐子訳)『スー:史上最大のティラノサウルス発掘』朝日新聞社、2005年、を読んでるが、ググっていて佐藤さんのこと知りました。https://digital.asahi.com/articles/ASN7Z5DCZN7KUEHF00H.html?iref=com_alist_8_08(2020年8月1日:但し、有料)

 こんな記事も:「高校生が見つけた「恐竜」、名字が学名に:50年の歩み」(https://digital.asahi.com/articles/ASL7N46DZL7NUGTB00G.html?iref=pc_rellink_01)。

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