遅報(5):おもしろトイレ・モザイク新発見

 ほんとは遊んでいる場合じゃないんですが (^^ゞ  これも遅ればせながらですが、面白いウェブを見つけてしまって。しかしこういう話題は図版や写真がないと説得力ありませんので、典拠を明記してあえてアップします。ご寛容のほどを。

 場所は小アジア半島南部の、Antiochia ad Cragumのローマ遺跡の紀元2世紀の公衆浴場内のトイレから面白い床モザイクが発見された(2018/11/2)。 

https://www.livescience.com/64000-dirty-jokes-mosaics-discovered.html;https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/search/label/Archaeology?updated-max=2018-11-14T08:00:00-08:00&max-results=10&start=839&by-date=false#yxIPrbQjzYfkfUHG.99



出土状況を俯瞰する
モザイク中心部

 左の区割りはギリシア語でナルキッソス。ギリシア神話で、水面に映った自分の美しい顔にみとれ、自分に恋い焦がれて死んだ。そのあとに水仙が咲いたので、欧米では水仙をナルシスと呼ぶ。この故事に倣いつつ、このモザイクは男根をしごいている次第。なお鼻が長いのは、当時の美術表現では醜男を表現している由。だから、水に映してうっとり見ているのは顔ではなく、自慢の男根ということになる。彼のかぶっている帽子は、腸卜師ないし占い師のアトリビュートに類似しているように見えるが、さて。

国立ナポリ博物館所蔵

 右区割りのテーマはギリシア語からガニュメーデース。美貌の彼に一目惚れしたゼウスは鷲に変身して、彼をさらってオリュンポスの神々に酒を注ぐ給仕にした。このモザイクで彼は酒瓶の代わりに右手にトイレ掃除用具のスポンジを持っていて、トイレにふさわしい絵柄となっている。ただそれだけではなくて、こっちの構図はなかなか複雑。たとえば彼は左手で鷲ではなくサギのような首とくちばしが長い鳥の頭をなでている。お尻の後に出ているもの(は私には最初男根に見えたのだが:こういう構図はナイル河畔風景図によく登場するピグミーでおなじみ、といいたいが、前の方に睾丸らしき袋が見えるので、ちょっと無理か)を、鳥が長いくちばしで突いているようだ(発掘者は、鳥がスポンジをガニュメーデースのお尻(より露骨に言えば、肛門)に当てている、と想定している)。

ピグミー像:国立ナポリ考古学博物館の旧秘儀の部屋前設置のナイル河畔風景モザイク(筆者撮影)

 ギリシア・ローマ時代では白鳥などの首の長い鳥は男根をあらわしているわけで、ガニュメーデースのかぶっているのはフリュギア帽となると、これはもう小アジアという場所柄もあり、自ずとキュベレの若いツバメのアッティスも連想させる。こうなると二重に男色を暗示しているように思えてしまう。なんともはや、ということで観る者の知識レベルに応じて幾重にも謎解きの読み込みが可能となる仕組みなのかしらん。

これは2018/11に公表されたポンペイ出土のレダと白鳥のフレスコ画
http://labaq.com/archives/51903082.html

 ギリシア神話をパロって、浴場やトイレの使用法には色々ありまっせと、用を足しに寄っている人たちの笑いを誘い、同時に知恵比べを挑んでもいるといえる。この手の内容は、 以前論文で扱ったオスティア・アンティカ遺跡の「七賢人の部屋」のフレスコ画と通底しているといっていいだろう。実はオスティア・アンティカ遺跡にはもう一つ、興味深い趣向を示す事例がありまして。機会があればまた紹介します。

【追伸】このブログを読んだ某君から、さっそく、ガニュメーデースの男根の描き方で亀頭が露出ているのは意味ある、とご指摘が。たしかにギリシア・ローマでの男性(神)像はおしなべて慎ましく上皮で包まれて(え〜、直接的に表現するなら、包茎で)描かれているのが常でして、これは性欲という獣(自然)的な欲望を理性で抑制できている神や人間の理想像を表現しているんだそうです。私など地中海人には包茎が多いのかしらん、とあて推量してましたが (^^ゞ、やっぱ観念論ではあきません。けど、その実証に励むのは・・・ちょっとねぇ・・・パスです。

 逆に旺盛な欲望の持ち主の場合は亀頭露出で表現されるわけです。ギリシア壺絵だとサテュロスなんかそうですよね(包茎もいるけど:下の図版は露頭型です」)。その下の、国立ナポリ考古学博物館の旧「秘技の部屋」所蔵(現在は、同一場所を整備して、年齢制限付きで公開[その実、いかにもイタリア的でして、チェックなし])のポンペイ出土フレスコ画(ヘルメスの姿を取ったプリアポス像)なんかもそうです。

紀元前6世紀半ばの壺絵:国立マドリッド博物館所蔵
(著者撮影)

【追記1】レダと白鳥のフレスコ画発見場所だが、ひょっとすると2018年夏に、第5地区で同じフレスコ画でPriapusの絵が発見されていたが、そこと同一邸宅かもしれない。 https://www.ancient-origins.net/news-history-archaeology/priapus-fresco-pompeii-0010592

【追記2】ピグミー関係ググっていたら、偶然こんなのを見つけてしまった。今回発見のと画題が似かよっている、といえなくもないような。

スペインのイタリカ、Casa del Planetarioモザイク部分

       ご感想やご意見はこちらまで:k-toyota@ca2.so-net.ne.jp

Filed under: ブログ

コメント 0 件


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Comment *
Name *
Email *
Website