このモザイクは、オプス・ベルミキュラートゥム opus vermiculatum 技法で制作されている。これは、小さなテッセラを波打つ線で敷き詰めたモザイクで(ヴェルミキュラートゥムは「虫のような」という意味)、このタイプのモザイクは、床モザイクで、主にエンブレマタ emblemata と呼ばれる最も精巧な細工が施されたパネルに用いられた。それは、オプス・テッセラトゥム opus tessellatum 技法でより大きなテッセラを用いて描かれた、精巧で幾何学的な花のモチーフで囲まれているのが通常だった。
ドイツから返還された恋人たちの姿を描いたローマ時代のモザイク画が、2025年7月15日(火)、ポンペイ遺跡公園の講堂で報道陣に公開された。「家庭愛というテーマが芸術の主題です」と、ポンペイ遺跡公園長で、返還作品に関するエッセイの共著者ガブリエル・ツフトリーゲル Gabriel Zuchtriegel氏は述べた。「紀元前4世紀から1世紀にかけてのヘレニズム時代は、神話や英雄たちの情熱を称えていましたが、今、私たちは新たなテーマを目にしています。」
誰も思い出さないだろうが、実は古代ローマ帝国のキリスト教迫害において、碩学J.Vogtが1962年のZur Religiosität der Christenverfolger im Römischen Reichの註記でずばり喝破していたように、近現代の日本における天皇は現人神として神格化され礼拝が強要されていくが、古代ローマ帝国では皇帝は生前神化はカエサルの前例から忌避され、巷で「皇帝礼拝」と言われている現象は、実は皇帝の守護神に皇帝の長寿や国家の安寧を祈願していて、善帝は死後神化する場合があったものの、根本的に理解が違っていたとされている。私のようなひねくれ者は「といいつつも、実体的に官憲と庶民において、実質的に皇帝には神に類する存在として礼拝が強要・受容されていたのでは、特に古来王政に馴染んでいた帝国東部ではその傾向があったのでは」と、一応言っておきたくなるのではあるが。