30年以上も前に、古代ローマの基本文献である藤井昇訳『マールティアーリスのエピグランマタ』上下、慶應義塾大学、1973-4年を、古書店から購入して(上下揃いで1万2千円だった:なんと青焼きで慶應義塾大学言語文化研究所長・松本正夫名の配布のご挨拶も同封されていた)、だがしばらくして気付いたのだが、上巻の後半に2箇所乱丁があった。裏切られた思いでガックリしたが、大学図書館の蔵書から該当箇所をコピーして、とりあえずは繕ったのだが、やっぱり完本がほしいと思い、そのとき「日本の古本屋」で調べたのだが、そのころは上下揃いばかりでしかもかなり高価だったりして諦めた経緯があった。
今回、引用文の参照で手に取り、その気になったのでちょっと古書を調べたのだが、アマゾンでみたら上巻のみで、新刊2万3千円強とか(おいおい残り11点もある由:蔵出し品か)、古書だとなんと8170円を最安値として22冊も売りに出ていたので、驚嘆した(郵送料は別にかかる)。下巻はだが古書のみでたった2部しか出てなかったが、安い方は約8千円。念のため「日本の古書店」もみたら、上巻のみは2部、上下揃いで5部出ていたが、予想どおりやや高めだった。しかし昔のように目を剝く高額ではなくなっていた。
いずれにせよ、知らない間に品揃えが豊富になっていて大変驚いた。想像するに、世代交代で我ら以前の諸先輩の書庫からの流出品が出回っているということなのかもしれない。さっそく最安値の上巻を発注した。今更不要とも思えるが、なんだか長年の胸のつかえがやっと下りたような気がしている。
こうして私が入手して完品となった上下巻もそう遠からず古書に売りに出されるはずで、微妙な心持ちではある。
【追記】その気になって、1994年出版の私の主著をアマゾンで調べたら、なんと26冊も売りに出ているようで、これには心底驚嘆した。これまでだとせいぜい3,4冊だったのに。ま、他人事ではない。献本した同世代以上が断捨離の時期に来ているのだから。私も本の整理をして献本されたものを情け容赦なく処分しなければならない現実があるのだ。

コメント 0 件