19世紀的史実実証主義の歴史叙述は、ともすると無味乾燥になりがちだが、それに対して、史実と物語を加味した、いわば自称歴史家の手になる正史から落ちこぼれてきた庶民感覚を拾い上げようという営みを主張しているようだ。私の持論とも通底しているようで、興味深い。
というか、小さな事例を積みあげてゆく営みそのものは歴史学の提要ともいえるが、そこでいわゆる英雄の歴史ではなく、庶民の目を軸に状況を見直そうというわけだ。古代ローマ史の場合、庶民史の史資料は断片的な銘文とかになるだろう。それが当時の著名歴史叙述には触れられていない事実の宝庫である。
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