以下の文章はある読書会参加者に書いたメールである。それに多少加筆して掲載する。
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実は先ほどまで21時から1時間、「フロンティア」で放映されたのが「ローマ:知られざる地下世界へ」。
掘ればかならず遺跡にぶつかるので新しい地下鉄は不可能とされてきたローマで、2007年から3番目のC線が着工されました。そして予想通り至る所で遺跡にぶつかり、それでも郊外に近いサン・ジョバンニ駅までは2018年に何とか開通したものの、そこから市内中心部をコロッセオ、ヴェネツィア広場と横切るわけですが、完成年は未だ定かでなく予算も大幅に増加してしまってます。このあたりはいかにもイタリアなんですが。
この番組は何度も再放送されると思うので、ぜひ一度ご覧下さい。もちろん、NHK+でも3/18までだと、登録者は無料でみることできます。
私個人的には、この放映で新しい情報が得られるかと期待していたのですが、これまでフォローしてきていた知識の再確認で終わりました。新知見がなかったのは残念ですが、私のアンテナがずれてなかったことだけは確認できました。
あとちょっと気になったのですが、ナレーションで数カ所おかしなこと言ってました。たぶん翻訳ミスだと思います。
そんな中でただひとつ偶然でびっくりしたのが、ヴェネツィア広場駅の工事でハドリアヌス帝(在位:117ー138年)建設の「アテナエウム」の平煉瓦の話が出てきて、煉瓦製作印に執政官アプロニアヌスとパエティヌスの名前が押されていたことです(映像にもっともらしい丸印がついた平煉瓦が映ってましたが、あれが当時の規格通りの大きさの平煉瓦です)。
それって偶然にも先日の会で出てきた執政官名ではないですか! ちなみに彼らは123年を示しているので、ハドリアヌスがアテナエウムを建設したのは135年以降とされていることともギリギリ年代的に整合しているわけです(興味ある方は、2019/5/19の私のブログ「ハドリアヌスのアテナエウム発見」をご覧下さい:また兵舎についても以下のブログで触れています;2019/8/14)。
もっとも、平煉瓦の製作工房がドミティア・ルキッラの工房のそれだったかどうかには、番組では触れられてませんでしたが。
【付記】これは、某読書会で、河島思朗『古代ローマごくふつうの50人の歴史』をテキストに採用して、私なりのコメントを述べているのだが、p.117-121に登場するドミティア・ルキッラの工房製作煉瓦の押印のことである。

すなわちこの瓦は、L.Venuleius Apronianus Octavius PriscusとQ.Articuleius Paetinus が正規執政官であった後123年に、Gnaeus Domitius Trophimus によって、Domitia Lucilla 所有のLiciniana/Liciana 粘土工房で製作された、というわけである。
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