中世ヨーロッパの軍馬は意外と小型

 1/10発の表記を考古学新情報の書き込みを見て、だったらローマ時代だって同様のはず、というわけで、紹介しようと思ったのですが・・・。念のためウィキペディアの「中世の馬」の項目に行ってみたら、案に相違して冒頭に「中世ヨーロッパの馬は、大きさ、骨格、品種が現代のとは異なり、平均して小型だった」とあっけらかんに書いてあって、脱力。だがまあ新事実あるかもと転載します。

 ま、ナチスドイツの戦車が全部ティーゲルだと思っちゃうのと同じ思い込みというものだろう。新しい研究で、現代の基準ではポニーサイズにも満たないものが多かったことが明らかになった。この時代の馬の体高は14.2ハンズ(=144cm超)以下が大部分だったが、実際、馬の価値とは馬体の大きさがすべてではないことは明らかで、むしろ種々様々な戦闘場面に適合的な繁殖・飼育・訓練が試みられていたことのほうに注目すべきなのだ。

これまで軍馬の代表みたいに言われてきた大型のデストリエdestriers種

 今般、研究者たちはイギリスの171の遺跡で発見された後300年から1650年までの馬の骨格データを分析した(International Journal of Osteoarchaeology, 31-6, 2021, pp.1247-1257)。その結果は、記録に残っている最も背の高いノルマン馬はウィルトシャー州のトロウブリッジ城で発見されたもので、約15ハンズと推定され、現代の小型軽乗用馬の大きさに近い。中世後期(西暦1200年〜1350年)になると、初めて16ハンズ前後の馬が登場するが、中世後期(西暦1500年〜1650年)になると、馬の平均体高が大幅に高くなり、ようやく現代の軍馬や輓馬のサイズに近づいてくる。こうして、中世の時代を通じて、戦場での戦術や文化的な好みの変化に応じて、さまざまな形態の馬が望ましいとされていた可能性の方がはるかに高い事が判明した。

 ただ、出土骨格で軍馬かどうかを判定することはできないこと、どうやら馬は死後に解体されて皮や肉は利用されたので完体での出土はまれ、といった分析上の根本的な問題が残っているようである。

 ちなみに、以下の古代ローマのコインの裏面には副帝ドミティアヌスの騎馬像が打刻されているが、騎手の足がほとんど地面につきそうに描かれている。ただし貨幣に写実性を求めすぎるのも問題だが。

 先日NHK総合で大河ドラマ「鎌倉殿の13名」第1回を偶然見たとき、北條義時役の小栗旬が伊東から帰る場面で騎乗していたのが小型の馬でとことこと走っていたので(彼が185cmと長身のせいではないと思う)、おや、やるなと思ったが、他は普通のサラブレッドとみた。

要は、馬脚の長さの違いのように思えるがどうだろう

【追記】以下の本が届いた。送料込みで¥12012かかった。これからはロバdonkeyとラバmuleだ。

 Peter Mitchell, The Donkey in Human History: An Archaeological Perspective,‎ Oxford UP, 2018, Pp.360.

 1ページ当たり33.4円か。かなりのものだ。

【追記2】2022/1/14発:こんな情報も。「馬以前に、家畜のロバdomestic donkeysと野生のロバwild assesを掛け合わせたスーパー・ロバ「クンガ」kungaが、戦車に使われていた」(https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2022/01/before-horses-ass-hybrids-were-bred-for.html)。

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