月: 2021年10月

オスティアのHP:オスティア謎めぐり(17)

 オスティアに関しては無類に充実したHPがある。それが「Ostia:Harbour City of Ancient Rome」(https://www.ostia-antica.org/)で、常時アップグレードしているので、オスティア研究する時にはまずこのHPを精読すればなにかと便利である。その管理人がJan Theo Bakker氏である。オランダのLeiden 大学関係者(卒業生なのは確か)らしい。彼のオスティア研究は1983年にはじまり、おそらく遅くとも1999年ごろから構築されたようだ。同志・友人たちの援助があるにしても、彼の継続的な熱意がなければとうていなしえなかった快挙である。

1998/11撮影

 ググっても彼の個人情報はそんなに公表されていないようだが(かろうじて、以下で多少書かれている:

https://www.ostia-antica.org/dict/intro.htm)、最初のローマ滞在が1987年、最初の著書を1994年に出版しているので、60歳前後あたりかと想像している。末永いご活躍を祈らざるを得ない。

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古代ローマ関係食材2点

 日頃イタリア食材でお世話になっている「ベリッシモ」(https://www.bellissimo.jp/c/new)から新入荷情報が来て、それを見ていたら、古代ローマの食材として以下2点が。ま、もちろんそのまんま古代のものであるはずはないけれど、少なくとも教材にはなるはず。

(1)古代小麦が原料のパスタ3種:古代ローマにパスタはなかったはずだがまあいいか。

 最近、グルテンによる小麦アレルギーが出るようになったせいで、それが発症しない品種改良されていない古代小麦への関心が高まっているようで、ググってみると「スペルト小麦」の広告販売、確実に多くなっている。私は昔、滋賀県産のそれを購入して学生に教材として渡したことがある。その一人は母にクッキー状に焼いたものを造らせてもってきてくれたので有難く賞味したことがあった。自作したら満点だったのに。

粉だと面倒だという横着な人向け(実は私もそう)には以下で焼いたパンを売ってくれる。(https://item.rakuten.co.jp/hamunder/kodai_set/)。ただし製品に「グルテン少なめ」とあったりするので、一応ご了解を。100%は600円高くなる。

 今回のは、ギリシャ時代からシチリアで生産されている古代硬質小麦「トゥミニア」とのこと。

【食後感】パサパサ感がなかなかいい、それに慣れるとグルテン系がねちこく感じられる。それに気のせいか食後にお通じもよくなっているような。

 以前見つけていたシチリア産古代小麦生地の現地情報:https://www.pokkasapporo-fb.jp/plyuki/column/20.html

(2)古代ローマの魚醬の中世・近世での発展形「コラトゥーラ」、それの日本・新潟産。

左、チェラータ産            右、新潟産

 本来はカタクチイワシが原料で、これまでイタリアだけでなく日本でも幾つか購入したが、教材用だったこともあり使い切ったことはない。新潟産は原料が鮭で、「チャーハンやパスタ、スープ、炒め物、煮物等日常的に」隠し味にお使いください、とのこと。まあアンチョビ代わりの隠し味といったところか。日本産の商品名「Ultima Goccia」(最後の一滴)が気に入ったのでどっかでパクりたい。

 あと、こういった話題では、古代ワインの件もあるが、それは改めていつか。先日、通販でギリシアの松ヤニ込みも飲んでみたが、・・・あんまし違いは分からなかった。ま、ものにもよるのだろうが。やっぱり現地で購入するのが一番だろう。

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エルサレムの王宮?遺跡から個人用トイレ発掘!

2021/10/8公表
Biblical Archaeology Societyからの情報(http://reply.biblicalarchaeology.org/dm?id=7F1C0DB737796CF5408185192138D194EAA4B20683170824)。

 イスラエル考古局の発掘チームは、第一神殿時代末期(紀元前7世紀頃)のもので、ユダ王国最後の王の一人が所有していた可能性があるトイレを発掘した。今日ではトイレは家庭の必需品だが、古代ではトイレは富や地位、特権の象徴で、それは古代ユダにおいても同様であった。出土場所の周辺の状況から、王の個人的な個室トイレだったと考えられている。素材は石灰岩らしい。

 この時期の「トイレ」は私が知る限り、このような丸い穴が開いているだけで、大するにせよ小するにせよちょっとどうかなと思わざるを得ないのだが、そんなこといえば、古代ローマ時代の便座だって、小には対応していない、と私は思っている。この上に別に椅子形の便座なんかがあって下に伸びる土管を固定するだけの機能かも、とつい思ってしまうのだが、さてどうだろうか。

 以下も参照。https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2021/10/2700-year-old-toilet-found-in-jerusalem.html

当時のトイレ環境の想像図

【追記】2021/11/12公開 このトイレから採取された土砂を分析した結果、回虫、サナダムシ、鞭虫、ギョウ虫の4種類の寄生虫の卵が確認された(残存できなかった寄生虫の卵もあったはずである)。これらは腹痛、吐き気、下痢、かゆみなどの症状を起こす寄生虫で、特に子供にとって、栄養失調や発達の遅れ、神経系の損傷、そして極端な場合には死に至ることもあった。

 

Armon Hanatzivの石造りの便座の下にあった堆積物から回収された腸内寄生虫の卵。(a). ギョウ虫Enterobius vermicularis;(b).回虫Ascaris lumbricoides;(c).豚鞭虫Trichuris suis;(d). 鞭虫Trichuris trichiura;(e).サナダムシTaenia sp. 各バー=25μm。写真はEitan KremerとSasha Flit(拡大率X400)

 以上、https://doi.org/10.1016/j.ijpp.2021.10.005

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もうひとつの「死の川」fiume mortoみっけ:オスティア謎めぐり(16)

 テヴェレ川関係をググっていて、以下の書き込みを発見(https://www.montinvisibili.it/Ansa%20morta%20Tevere)。表題は「テヴェレ川の死の曲がり角」Ansa morta del Tevere

 てっきりオスティア・アンティカ付近の1557年の大湾曲部分の切断のことだと思って読み出したのだが、・・・なんか変だ・・・。

 掲載のGoogle Earthの地図がなぜか湾曲が真逆になっているしと思っていると、測量図的な地図も出てきて湾曲部分の真ん中を「G.R.A.」が横切っているではないか。それは首都ローマの回りを走る高速道路「ローマ大環状線」のことなので、こりゃ違うぞと。

 調査の結果、この場所をテュレニア海の河口から遡上させると、下記の画像の右上となり、遺跡から直線距離で11.5km、逆にそこからローマ市内のフォロ・ロマーノまで直線距離で11km。まあ、帝都ローマから河口までの中間点。現在自然公園化されていて、この湾曲に沿ってサイクリング道があるそうで、それ関連の写真もいっぱい出てきた。こんな場所があったこと、これまで全然しらなかった。

                     右上の青色に注目せよ ↑

 ところで、先にこの「もう一つ」に触れてしまったが、我らの本命の「死の川」についてはまた別に紹介したい。

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最近の海中考古学情報

 久々にArchaeological News Networkを覗いてみた。幾つか最新情報が目についたが、中でも以下が興味深かった。

 「エガディ諸島の戦いで発見された2つのブロンズ製軍艦ラム」(

https://archaeologynewsnetwork.blogspot.com/2021/09/two-bronze-warship-rams-discovered-at.html

 この記事は第1次ポエニ戦争に決着をつけた「エガディ諸島の海戦」(前241年3月10日)での2021年夏の調査で、新たに青銅製の2つの衝角(ラム)その他が発見されたという報告である。今回の調査ではその他にも、戦闘時に弾丸として使用された鉛製のスリンガー弾数十発、青銅製のヘルメットや頬当て数個、ローマ時代やヘレニズム時代のギリシアのコインなどが発見されたらしい。すべてがあの海戦の遺物だとすると、噂に違わぬ大海戦だったわけだ。とはいうものの、あのブログに掲載されているのは海上に引き揚げられた衝角の写真だけだった。もっと詳しく知りたいものだ。

 以上はこのプロジェクト16年目の成果で、それ以前には古代の衝角はなんと2つしか発見されていなかったものが、これで25個を数えるに至った由。なかなかの成果だが、だれかまとめて紹介してくれているのだろうか。

軍艦に装着された衝角想定図                海戦想像図

 しかも今般、副産物的に、後4世紀前半のアンフォラ(現ポルトガルのルシタニア製とスペイン・バエティカ製)を輸送していた難破商船さえも発見した由。こっちも知りたいものである。

 しかしこういう情報に接するたびに疑問に思うのだが、なぜ我が国の共和政ローマや海軍史やっている研究者(およびその周辺、院生など)がまともに紹介しようとしないのか、ということである。

 そんなこんなで、もっと詳しい情報はないかとぐぐってみたら、2017年度の報告がアップされていた(https://www.realmofhistory.com/2017/10/31/battle-egadi-islands-punic-war-rams/)。ここではなぜかそれをうまくアップできなかったので、YouTubeを掲載しておこう(あれ、後からみたらアップされてたのは、なぜ? 今度は余分な二つ目の消し方がわからん;あ、なんとか消せたぞ:以上、アップ時の独り言でした)。

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