「貿易」や「交易」ではないのでは、というのが私が久しく疑問にしてきた訳語である。
じっさいググってみると、「貿易(ぼうえき、international trade、trade)とは、ある国(またはそれに準ずる地域)と別の国(同)との間で行われる商品の売買。商品を外国に対して送り出す取引を輸出、外国から導入する取引を輸入という」とあって、だからローマ帝国内での商品流通を「貿易」と訳すのなら、訳者の意識の中にローマ帝国がいわゆる一国構成という理解ではなく、支配と従属の多民族連合国家という認識を下敷きにしているというべきだろう(私はこの認識自体は正しいと思っている:ローマ帝国は、現代の我らがそう思いがちな統一国家ではない、と私は確信している)、というのが私の立論の根拠なのであって、実際「帝国」の定義は「自国の国境を越えて多数・広大な領土や民族を強大な軍事力を背景に支配する国家
、軍事力で広大な領域を支配している国や侵略主義的な大国
」となっているようで、私的に言うと、そういう間接統治という視点でお訳しになっているんですね、と翻訳者に念押ししたくなるのだが、実際には翻訳者は単純に帝国を一国と捉えているに違いないのである。
じゃあ、ローマ帝国を一国と理解した場合、どう訳せばいいのだろうか。しかしこれも意外に難問である。まあ考える視点として、日本国内での物流をどう表現するかなんだけど。「貿易」「交易」「通商」なんかは避けるべきとして、言葉が貧しい私など、「取引」「商い」「売買」「商売」など、気の抜けた文言しか思い浮かばず、困っている。識者のアドバイスを求めたい。k-toyota@ca2.so-net.ne.jp
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