今日みた映画「パーフェクト・ケア」

 もう十年も前になるだろうか、テレビで偶然「老人の恋:紙の力士」(2010年)を見たときに、こりゃ笑い事ではないなと実感した(主演のミッキー・カーチスが良い味を出していて、家政婦役の丸純子もここでは悪賢くなくおとなしめで、その抑制で「後妻業の女」(2016年)以上の余韻が漂っているようにさえ私は感じた)。そして私の義弟が余命一年とかに宣告され後事を託されたとき、「気をつけてね」とつい言ってしまったのだが、その時の彼の表情からすでに察するものがあった。ひょっとしたらと覚悟していたが、まあ遊び友達レベルだったようで、しかし世の中には人生最期にいっしょに遊んであげる女性がいるなどということを初めて知った。

 今回帰国後、これも偶然「パーフェクト・ケア」(2020年・アメリカ)をテレビで見た。詳しくはネタバレになるが、ウィキペディアの詳細を究めた解説をご覧いただくとして(https://ja.wikipedia.org/wiki/パーフェクト・ケア)、私にとってきわめて印象的だったのは、アメリカにおける成功者・勝ち組には誠実・着実に仕事をしていてはとうていなれない、だが成功したあかつきには「成功の秘訣などない、ただ努力のたまもの」と公言するのが常である、ということを明確に主張していることだった。そして今回のテーマは、私自身の近未来に迫っている老人の看取りがらみの組織的収奪なのである。

 主演のロザムンド・パイクはこれまでいくつか出演映画をみていたが、清純派のたたずまいで、そんなに個性的な印象はなかった。むしろなにかアンバランスで不安定な感じがあって(おそらく生来淡泊な性格と冷たく見える目線のせいだと思う)、今回はそのアンバランスな目つきが悪女的役回りにぴったしで、私は、そんな彼女に冷酷に反撃をするロシア・マフィアのほうに徹頭徹尾肩入れして見てしまった。

 そして老人たちの主治医と結託して、老人を認知症に仕立て上げて、裁判所のお墨付きで法的後見人となり、これも結託している施設に実質的に強制隔離し、老人の財産を収奪していくプロセスは、さながら未来というかすでに現実社会を彷彿させているわけで、なかなかエグい内容だったのである。こういう新状況に着眼して容赦なく蓄財して太っていかねば勝ち組にはなれないというわけなのだ。その際、ターゲットになった老人はまったく無力なのだから、こりゃ悲惨である。おれおれ詐欺どころではないわけで。

 

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