「感染症に斃れた日本軍兵士」を見た

 今年はなぜか戦争関係のドキュメンタリーで力作が放映・再放映されて、たくさん見たような気がする(https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=30199)。

 2021/8/22 NHK BS1スペシャルで上記の副題「マラリア・知られざる日米の攻防」を見た。見終わったと思ったらまた同じ題名で、副題が「追跡・防疫給水部2万5千人」が連続して始まっていた。明日に向けての急ぎの仕事があったのだが、とうとう全部見た。マラリア、デング熱、破傷風への対策でも米軍に負けていた,という内容だった。風土病への備えなしに兵士を南方に送り、もちろん陸軍は防疫給水部で対応しようとし、人体実験で悪名高い731部隊開発の石井式濾水機なんかを投入はしていたが、そんなことで十分ではなく、当たり前のことだが送っても送っても兵力は疫病で4分の1に減じてしまう。それが皇軍兵士6割以上が餓死・戦病死するという惨状の原因だったわけだ。もちろん現場では問題の重要性が分かっていたが、本国ではだからといって効果的な対応をとらなかった、というくだりがあって、新型コロナでも同じような無策でうち過ごし、ナーナーのうちに終熄して、ああよかったで終わりたがっている現況をどうしても思い出してしまった。

 たとえば、前半のマラリアの特効薬キニーネであるが、当時それを世界的に独占的に生産していたインドネシアを日本軍が抑えてしまったので、米英軍などは困ったわけだが、大急ぎで新薬開発に向かって成功、他方、日本軍はといえば資源はあっても補給がうまくいかず兵士はばたばた罹患して斃れるというお粗末さ。後半での、破傷風にしても北里柴三郎が治療法をドイツ留学中に世界に先駆けて開発していた(1890年)にもかかわらず、だが保管などに問題があってそれが未解決のうち、やはり補給がネックとなった他方で、米軍はワクチン開発に成功して、大戦中の破傷風発生は12件のみだった由。

 これは「八木・宇田アンテナ」(1921年)開発の重要性を感知できなかった我が愛すべき祖国の体たらくに通じるものがある(「あろうことか、1941(昭和16)年には「重要な発明と認めがたい」という理由で商工省から特許期限の延長を却下されている」:https://emira-t.jp/eq/9642/)。

 こういった問題は言い古された話ではあるが、官僚的な縦割り構造の弊害で、一部の優れた研究者がいたところで、国家レベルの動きに連動しないヤマト民族の通弊の現れであり、あれから1世紀過ぎても状況はまったく変わっていないどころか、感染症対策は、保健所制度の縮小、ワクチン開発軽視等で、むしろ後退している現状があるわけである。なにしろ、新型コロナウイルス感染拡大からすでに1年半経過しているにもかかわらず、8月に入ると1日の新規感染者が過去最多を更新する日が全国で相次ぎ、状況は改善されるどころか悪化しているのだから。私は、保健所を増設せよといっているのではなく、危機的状況に柔軟に対応するシステムが構築できない民族性を問題としているのだが・・・。「こんな前例のない危機に国は無力ですから、国民の皆さんはどうか自力で対処してください」という論理、これは戦災被害者への責任放棄論法と瓜二つにみえてしまう。

佐賀県武雄市出身で、1944年 6月に46歳で臨時召集され、第49師団防疫給水部隊に所属しビルマ(現ミャンマー)戦線に派遣された故井手貞一さん(1995年、98歳で死去)の手記。彼は、現地では泥水をろ過し、第一線に届ける仕事を担った。翌45年8月に英国軍の捕虜になり、復員した。手記では戦況が悪化する中、補給も追いつかず、栄養失調やマラリアで倒れる人々を目の当たりにし、命からがら退却する姿を描いた。こうした状況をジャングルでは竹の皮に、捕虜になってからは缶詰のラベルの裏にメモした。

  公開された手記は、自身が「終戦三十三回忌」の77年にメモに基づいてまとめたもので、B4判15ページ。自由に恵まれ、戦争を知らない若い人が「戦争を繰り返すような間違いが無いように」読んでほしいと、残そうとした理由もつづった。早く本になるかデジタル化してほしい。

 「『歩けません。早く殺して下さい。そのピストルで射って下さい。敵に追いつかれると恥めにあいますから。どうぞお願いします』と男装の女性(従軍看護婦)は悲しい声で合掌するものもある。・・・何の罰(罪)もない味方の女性を殺生する勇気も胆力もなく・・・」(https://www.nishinippon.co.jp/image/245981/)

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