宗教と政治:旧統一教会問題に寄せて

 オウム真理教の大暴走のとき、世間は挙げてかの宗教を非難した。確かに暴走は非難されるべきだったが、世の宗教関係者は、キリスト教は、ムスリムはあんなエセ宗教とはまったく違う、と連呼していた。そうしなければ非難が自らに及びかねないと判断したからであろう。私はその風潮に対して、それはおかしい、宗教の一面にはそのような狂気が抜きがたく潜んでいる(「狂気」という語がきつければ、「直情」といい直してもいい)、ある意味でその非日常性が宗教の原動力なのに、それを否定してどうする、とどこかで書いた(ないしは、つぶやいた)記憶がある。しかし今それを再論するつもりはない。

 これは宗教に限ってのことではなく、なににしても同じことだと私は思うのだが、対象を内から眺めることなしに、その対象の本質には触れることはできない。逆に、内部に取り込まれた認識からは外部の常識が非常識に見えてしまう。研究者の難しいところは対象と付かず離れずの関係を維持していくことだ。しかしこの営みは内部からも外部からも攻撃の対象となる、実に困難な道なのである。

 宗教団体を知らない人が宗教を論じると、自分の都合に合わせて過剰反応しがちとなる。生半可な知識で攻撃して恥じないからだ(世論も味方するはずとの打算が見え隠れしているし、それを聞いた信者は「またウソついている」となる)。彼らの分析は不可避的に的をはずして上滑りするのが常である。では内部事情を知っているはずの信者の判断がいつも正しいかというと、これも問題ありとなる。組織防衛が先に立って都合が悪いことには蓋をしちゃうからだ。では元信者はどうか。それが試される試金石が2022/7/20掲載の、以下のような気がする。

 仲正昌樹「安倍氏と統一教会は「ズブズブ」だったのか? 元信者が自ら明かす“実態”」(https://www.mag2.com/p/news/545895?utm_medium=email&utm_source=mag_W000000001_wed&utm_campaign=mag_9999_0720&trflg=1)。

 一読して、かなりいい線いっているように思えた。ただ彼が参加していた時期に限っての見聞においては、としておいたほうが無難である。宗教(理念)と違って、宗教団体、特に新興宗教団体は彼も書いているように実に不安定な動体なので、次々に変容していく存在と考えた方がいいからだ。

 その点、既成宗教団体とは牙を抜かれた猛獣のような存在といっていい。図体がいかに恐ろしげにみえてもすでに去勢されたこけおどしで、集金システムだけはそれなりに機能していたりする。それに幻滅したメンタリティがいわゆる「新宗教」に惹かれていくのである。

 いずれにせよ、彼の著作『統一教会と私』が我が図書館に所蔵されているようなので、明日借り出してみようと思っている。

【追記】上記の書籍は、アマゾンで調べたら現在売り切れで、補充も未定となっていたが(時節柄売れていたのかも)、我が図書館所蔵のものは学生の関心が薄いとみえて借り出されておらず、表紙に折り目もついていない新品同様で、首尾よく私の手元に入った。借り出し期限は10月19日まで。帰りの地下鉄を含めざっと5分の2を読んだところだが、至極ごもっともな筆致で抵抗なく読めている。普通では書かれない個人レベルの心情の揺れも包み隠さず吐露していて、それには誠実ささえ感じることができる。  翌日読了:読んでいくとどうも初版ではないらしいが、奥付にそれは書かれていない。改訂新版というべきか。2022/7/28:なお、今現在は入手可能。

 宗教団体の実態は強固な一枚岩ではない。メンバーたちは出身社会層で自ずと意識が異なってくるし、組織側もそれを十分知っていて異なった活用を考えていたりする。このあたり普通の会社が社員の有効活用を考えているのと同様だ。この本の著者は、結果的に統一教会で自己実現できなかったわけだが、語学が得意な高学歴者としての活用が計られ、それが離教へと繫がっていった。これがしがない社会層だったら集金要員で終わっていたかもしれない。しがない信者の中には、その役目を忠実に果たさないと組織からはじかれる恐れで駆り立てられる者も出てくるだろう。社会問題化するのはそういう人たちの行動の場合が多いはず。

 私は何回か出身大学で集中講義をしたことがあるが、その主要テーマは私の持論の、ローマ帝国内でのキリスト教の政治的上昇のからくり、だったりしたのだが、あるとき一番前の席で熱心に聞く男子学生がいて、質問もしてきた。しかし他の学生たちの彼に対する微妙に見下したような反応(露骨にせせら笑うような感じ)を妙だなと思っていた。集中講義が終わった時に、その彼が話したいというのでいっしょに鷹野橋手前の喫茶店に連れて行かれた。そこには他の学生たちも来て、彼らが原理研究会の連中で、ああそういうことかと。彼らはあれこれ夢を語ってくれたが(その中には、第三世界での井戸掘り活動とか、日韓トンネル構想とか、今の「一帯一路」・シルクロード経済ベルト的な構想もあった)、私は「30歳近くになるといずれ教義に疑問に思ったり、組織とぶつかるようになるときが来る、さてそのとき君たちはどうするかな」と、かつての自らの体験を吐露して、まあ軽くあしらって終わったのだが、そういうことがあった。その後の接触は皆無だった。さてあの時の彼らは今どうしているのだろうか。

 教祖の死亡、教祖一族の遺産相続問題での内紛、それに識者信者層内の分裂(特に教祖による北鮮評価の変化を転機とした)、と、ご他聞に漏れず他の宗教団体と同様な問題を抱えているようだ。それで納得できたのだが、私が時々覗いてみるブログに書き手が同系列の、しかしおそらく反主流の『世界日報』系の人らしいものがあって(http://blog.livedoor.jp/wien2006/archives/52336567.html)、しかし論旨に全然と言っていいほど色を感じなかった理由もそのあたりにあったのか、と(以下参照:https://mainichi.jp/articles/20220802/k00/00m/010/137000c?cx_fm=mailhiru&cx_ml=article&cx_mdate=20220803)。

【追記2】

2022/7/22「旧統一教会は「日本にだけ献金要求が大きかった」元信者の大学教授が理由を解説」(https://news.yahoo.co.jp/articles/364c9907be412f60e907f61fc3f78dbfb9711d2b)

仲正昌樹(1963-)

【追記3】以下は、読書会メンバーからの質問「統一教会ってキリスト教なんですか」に答えた返信です(一部付加修正)。

「私はこの問題を宗教史的観点から見ています。
 そもそもキリスト教は、ユダヤ教の中から出たわけですが、イエスを神であり救世主としたので、ユダヤ教の異端とみなされ、迫害もされました。にもかかわらずキリスト教は成長してきました。
 なのでユダヤ教から見るとキリスト教はユダヤ教の「異端」といえる存在です。
 
 統一教会は教義の中心を旧約聖書から採用してますので、アメリカのモルモン教(独自の教典「モルモン書」を持つ)同様、キリスト教とまったくの無関係とはいえない存在ですが、教義的に新約の不完全さを全うする教祖の文鮮明を救い主にしているので、現在のキリスト教主流(カトリック、正教、プロテスタント)からは異端視されています。

 成長途上の新宗教が先行既成教団に対抗する場合、その時代の許容範囲を超えた活動に走るのはよくある事態で、統一教会の霊感商法などもその一つだと思います(真理オウム教も同様です)。世間的にみると、それで人生を棒に振る信者もいるわけですが、本人はそれを神から与えられた「試練」ととらえて、さらにのめり込む場合もあるのです。
 「カルト」といわれる団体は分派特有の直情型の行動形態をとりますが、何らかの形で先行する既成宗教の影響を受けているので、統一教会も大きな枠ではキリスト教に含まれるわけです。

 今は正統派になっている集団も、そうなる以前はご同様の行動パターンをとる信者がいて、彼らのほうが一般の信者よりも教勢拡大に大いに貢献していたのだけど、教団がそれなりの大きさになると、今度は社会的認知を得るために、彼らを「狂信者」「異端」として排除するという手のひら返しをするわけです。
 まあ創価学会も昔と比べればやたらおとなしくなりました。社会常識に順応した宗教団体への過渡期にあるわけです。巨大なだけに、今に分裂するか内実を失っていくはずです。

 文鮮明は生前に七男の亨進を後継者に指名したが、死後に、教団は妻の韓鶴子が継ぎ(実際は長老たちに担がれてのことらしい)、三男の文顕進もメシア宣言して「グローバルピースフェスティバル財団」を分派、継承権を奪われた七男の文亨進は「サンクチュアリ教会」としてアメリカで活動し、なんと「銃」を重視した宣教しています(トランプの支援者でもある)。この七男は6/25からちょうど来日していたようですが(私は最初、「銃」がれみで狙撃犯はこの分派所属と思いました)、まあ教祖一族をねらっていたけど3つに分派しているのなら誰殺しても無意味なので(誰をやっても残りの二人が喜ぶ)安倍を狙ったということらしい。
 ご興味あれば、以下をご覧下さい。
https://aruda.hatenablog.com/entry/20220709
https://cult110.info/news/moon-hyung-jin-japan/」

 この最後のHPは「キリスト教異端・カルト情報サイト:異端・カルト110番」と銘打っており、キリスト教関係のあやしい集団についての専門サイトのようです。

【追記4】2022/8/1「統一教会がカネ集めに使った「日韓トンネル」:騙されて3億7000万円出した人も」(https://news.nifty.com/article/domestic/society/12280-1781726/)
 この記事読んで思い出した、私が鷹野橋の喫茶店で聞いたのはこれだった、と。「大陸横断鉄道」だったのか「国際ハイウェイ」だったのか、はもう忘れてしまったが。
Filed under: ブログ

コメント 0 件


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Comment *
Name *
Email *
Website

CAPTCHA