忙中閑あり:今日の読書『しょぼい喫茶店の本』

 例の如く行き当たりばったりのテレビで、妙なドキュメンタリーを途中からみた。10/13(日)の午後「ザ・ノンフィクション」で「好きなことだけして生きていく 後編」。そこでの主役は京都でシェアハウスを10年あまりやっていたpha(ファ)氏が、40歳になったのを期に、猫と一緒の一人暮らしを始めた、という内容。「働きたくない、好きなことだけして生きていきたい」という彼の生き方に共感する若者たちが色々登場して、その中に喫茶店始めた25才の池田達也くんがいた。

 私が彼に注目したのは、なに、彼の出身大学が在職してた大学のしかも同じ文学部出身だったからで、それで興味を持った次第。彼の書いた本をさっそく古書で発注した。古書なのにそう安くなかったが(税抜きでのほとんど定価だった)、今年の4月発刊(百万年書房)なんだけど。それが今日家を出るときポストに届いていたので、このところ連日登学の四谷に往復の地下鉄の中で半分以上読み進めた。まあだいたいテレビで紹介されていた内容だったせいもある。

 現在、私は同時進行の作業を3つ4つ抱えていて、多忙の極みなのだが、家に帰ってとうとう完読してしまった。いかにも現代の若者らしく情報入手が、インターネットのツイッターなんかで、ツイッターで知り合った色んな人たちの援助を得て、それでとんとん拍子に話が展開して、喫茶店を立ち上げるという話である。実際にはサギまがいのほうの事例が多いはずなので、これは幸運というほかない。それなりの青春旅立ち物語であるが、社会に合わせて生きていくのが苦手な不器用な感性の持ち主の悩みが素直に表現されていて、生きにくい、死にたいと感じている人たちの共感をえる内容となっているように思う。これ読んで一人でも前向きな気持ちになってくれればと願う。せっかく生まれたのにもったいないよ。

 でも、これが今のような飽食のゆるい世界ではなく生存競争まっただなかの飢饉の時代だったりしたら、他人を押しのけても生きたい、と人はおしなべて思うものだろうか。それともひっそりと餓死していく人間類型っていたのだろうか。昔の私はもちろんみな前者になると思っていたのだが、最近はひょっとして後者もいたのではと思い直すようになった。戦災孤児なんかを想像してのことである。

【追伸】今テレビで「カイジ」とかいうアニメ流れていて、突然ブルー・ハーツの「未来は僕等の手の中」が大音量で飛び込んできた。しかもアニメが終わる毎に(https://www.youtube.com/watch?v=m4RPWG0A2MI)。どうやらカバーらしいが、その1節を提示したい。「僕等は泣くために 生まれたわけじゃないよ、僕等は負けるために 生まれてきたわけじゃないよ 生まれてきたわけじゃないよ」。

 その翌日、今日も今日とて内田裕也主演の映画「コミック雑誌なんかいらない!」が放映されて、終わったと思ったら真っ暗な画面で頭脳警察のそれがかすかに流れていて、秀逸。なぜかこのCD持ってるんだよね。

【付録】一昨日の読書:礫川氏に導かれて最近読んだ、というより再読した。松本清張『或る「小倉日記」伝』角川文庫、昭和33年。これには、表題の他、「父系の指」「菊枕」「笛壺」「石の骨」「断碑」が納められているが、最初のものを除くと、考古学や歴史、そして文学に取り憑かれた人間のいびつな姿がこれでもか、これでもかと登場する。昔読んだはずだが全然記憶にないのはどうしたことか。

 しかし、私も高校生の時は考古学やりたいと思っていたのだが、それでは食っていけない、不幸な人生になる、とよく知りもしないくせになんとなくそう思い込んで、進路を若干ずらして史学科にしたのだが、その頃に読んで影響を受けていたのかも知れない。一丁前に悩んだ挙げ句、意識的にその記憶を封印してしまったのだろうか。いずれにせよ、これらの登場人物たちに若き時代の清張の屈折感情が投影されているように思うのは、私の勘ぐりすぎか。かなり自伝的要素の強い「父系の指」に書かれていてびっくりだが、清張が広島駅前の京橋付近の生まれとは(但し、ウィキペディアでは旅行中の出生とのこと)、今回初めて知った。

 ところで最近の若者は清張なんか読んでいるのだろうか。最近ケーブルテレビで彼原作のドラマが延々と流されているが(生誕110周年のせいか)、時代の変化か、あまり触手が伸びない。同様に、私が学生の頃一世風靡していた西洋中世史家に阿部謹也もいたのだが、どうなんだろう。

【後日記】2019/10/31:NHK BS4で「反骨の考古学者ROKUJI」をやっていたのを途中から見た。松本清張の「断碑」のモデル、森本六爾を扱っていた。番組の最後が切ない。彼の死後、彼が求めていた弥生稲作の証拠となる資料ががっぽり発掘されたのだから。彼の生涯にについては、以下参照。https://www.sougiya.biz/kiji_detail.php?cid=676

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