ポンペイの石膏像修復で分かった新事実:遅報(4)

 遅ればせながらのご報告です。  
 2019/4/6放映のNHK 地球ドラマチック「ポンペイ 石こう像の新事実」44分を、現在オンデマンドで見ることできます。東京では15日00:00からEテレで再放送されるようです。これは2018年イタリア製作のもののようです。  
 これは石こう像の修復にともなって、DNA分析を含む、先端光学機器で分析する様子が紹介されていて、我々の研究にも大いに参考になりそうです。  
 私的にもっとも衝撃的だったのは、最後に、DNA分析から、「黄金の腕輪の家」(VII.16.22:Casa di M.Fabio Rufo e Bracciale d'Oro)出土の「家族の像」の4人の間に遺伝的関係がないこと、しかも母親と思われていた像は男性だったことが判明したことでした。また、「乙女たちの像」(I.6.2:Casa del Criptoportico)の一人は男性で、もう一人は特定できなかった、という事実が証明されたことも。彼ら二人が男性だったら同性愛者たちの可能性を発掘者たちは指摘しているようです。こういう発想はさすが同性愛天国のイタリア人の着想ですが、私にはちょっと先走りすぎているように思えて、疑問です(いかにも新聞記者が飛びつきそうな話題にしているとしか思えませんよね)。
 ともかく、ロマンティックなストーリー性が失われて、若干がっかりもしますが、話題になりそうにマスコミを意識し、見た目で判断してきた従来の研究の問題点があますことなく明確に指摘されたわけです。

http://www.thehistoryblog.com/archives/46830
これまで家族と思われていた4体の石膏像:VII.16.22
いわゆる「乙女たちの像」:I.6.2

【追伸】これまでは、もっともらしく以下のように想像されていました。http://karapaia.com/archives/52192827.html

       ご感想やご意見はこちらまで:k-toyota@ca2.so-net.ne.jp

【追記】ぐぐっていたら、ウェスビオ山の「噴火は秋だった」というブログがあって。で、お節介ですが、それには異論もあってまだ論争中です、ということで。以下参照。坂井聰「ポンペイはいつ埋没したのか:噴火の日付をめぐる論争」『モノとヒトの新史料学』勉誠出版、2016年、pp.160-186. また、一昨年発見の落書きについて、同じ坂井先生の紹介がこのHPの「実験工房」のほうに速報を寄せられています。それまでのつなぎとして、私もこのブログの2019/7/2に書いていますので、興味ある方はどうぞ。

【余談】こんな情報もみつけました:「古代ローマの「恋人たち」 実は男性同士手をつなぎ埋葬」(https://www.afpbb.com/articles/-/3244454?pid=21624720)。こっちの研究者はいたって冷静。

イタリア半島根っこ中央のモデナ出土

原情報はこちら:https://www.nature.com/articles/s41598-019-49562-7

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